>>205
欧米でhumanitarian corridor(英語の場合)という語が使われていて、その直訳として人道回廊という語が専門の界隈で使われているらしい。corridorという語はもともとは建物の中の通路をさし、そこから拡大してまわりを囲まれた細長い場所もさす。回廊はcorridorの訳語の一つで、何かをとりまく形の廊下を言うが、一本道の通路的なものにまで当てられているようだ。元は訳語のニュアンスの差を気にしない「専門家の間なら分かるだろ」的な直訳っぽい。humanitarianはもとは「人道主義者の」という意味で、拡大して「倫理的な配慮による」という意味で用いられる。実際にさしているのは危険な場所から逃げるためのルートのことだが、これは軍事的婉曲表現の一種だ。

欧米では、政治の争点として重大なものや、暴力、流血をともなうようなものをそのまま表現せず、遠回しに単語を言い換えたり、単語をくみあわせてあいまいな表現にしたりする文化がある。で、軍事はその性質上そのまま何かを表現するとどうしても暴力の臭いがするので、その手の婉曲表現が盛んに用いられるのな。その典型は「無力化」annihilizationだが、このhumanitarianというのも「戦場になっている場所から民間人が逃げる」的なことを単語に入れると人々の反響が大きいから使われる言い換えだな。