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世界最小のカタツムリを発見、なんと砂粒大

殻の直径はわずか0.6ミリ、極小の新種2種が報告、一方の殻には糞の粒が多数

砂粒ほどの大きさの、地球で最も小さいカタツムリの新種が2種見つかった。

「これほど小さな陸生貝が見つかるとは、本当に意外でした」と驚くのは、スイス、ベルン自然史博物館の研究員で、ドイツ、ゼンケンベルク研究所にも所属しているアドリエンヌ・ヨッフム氏だ。
 新記録を打ち立てたカタツムリの小ささは、その学名「アングストピラ・プサミオン(Angustopila psammion)」に現れている。「プサミオン」は、「砂粒」を意味する古典ギリシャ語に由来する。1月5日付けで動物学の専門誌「Contributions to Zoology」に発表された論文によると、殻の直径がわずか0.6mmのこのカタツムリは、ベトナム北部の洞窟の壁面に多数生息しているという。

 もう1つの新種は、ラオス北部の石灰岩の渓谷で発見された「アングストピラ・コプロロゴス(Angustopila coprologos)」。この種はA.プサミオンよりもわずかに大きなカタツムリだ。A.コプロロゴスの殻の表面は、泥のような極小の粒で飾られている。論文の共著者であるヨッフム氏は、この泥状のものは糞だと考え、ギリシャ語で「糞を集める」という意味の「コプロロゴス」という名前をつけたという。

 A.コプロロゴスはなぜ糞を集め、真珠の装飾品で体を飾り立てるように、殻の上に並べるのだろうか? ヨッフム氏は、ほかの個体とコミュニケーションをとるためではないかと考えている。例えば、糞は交尾相手を引き寄せる化学的な合図なのかもしれない。また、小さなカタツムリにとって乾燥は大敵だが、湿りけのある糞を殻の表面に並べることは、乾燥から守るのに役立つのかもしれない。

「今回の発見は、私たちが極小の生物についてほとんど何も知らないことを教えてくれます」とヨッフム氏は語る。「ミクロの世界には、私たちが発見していないことがまだまだたくさんあるのです」
小さければ楽に生きられる?
 研究チームは、東南アジアへの2回の遠征で堆積物のサンプルを収集してきた。石灰岩質のその地域には、ほとんど研究されていない多種多様なカタツムリが生息しているため、未発見の種が見つかるのではないかと期待していた。研究者たちは、採取した土を水に入れ、表面に浮かび上がってきたものをすくい取ってから、顕微鏡でカタツムリを観察した。

 研究チームは今回、カタツムリの殻しか見つけることができなかった。生きている個体は、堆積物中のもっと深いところにいるのかもしれない。その生態の詳細は不明だが、おそらく小さな微生物、デトリタス(生物由来の微細な有機物粒子)、菌類のかけらなどを食べているのだろうとヨッフム氏は言う。

 新種のカタツムリたちは、その小ささを生かして堆積物や岩の隙間、あるいは植物の根の表面で暮らすことで、捕食者から逃れているのだろうと推測される。

 一方で、米カーネギー自然史博物館のカタツムリ研究者、ティモシー・ピアース氏は第三者の立場で、小さいことは良いことばかりではなく、困難もあると指摘する。おそらく、このカタツムリにとっては、卵を産まなければならないことが主な制約になっている。卵は殻の開口部に合った大きさでなければならないが、このカタツムリの開口部の幅は約200ミクロンしかない。200ミクロンと言えば、人間の髪の毛約2本分だ。

 さらに厄介なのは、産卵される前から卵の中で殻が成長しはじめることだとピアース氏は言う。脳や肺や心臓などの臓器も、殻の中に収めなければならない。

限界への挑戦
 これまでの世界最小の陸生貝は、2015年にボルネオ島で発見された「アクメラ・ナナ(Acmella nana)」で、殻の大きさはA.プサミオンと同程度だが、平均重量は約20%重い。今回の発見にあたりそれぞれの体積を計算した結果、A.プサミオンが0.036立方ミリメートルで、A.ナナが0.044立方ミリメートルだった。

 陸生貝ではなく海生貝なら、この2種よりもさらに小さいものがいくつか知られている。論文の共著者であるカーネギー自然史博物館のカタツムリ専門家、エイディン・エルスタン氏は、海生貝は乾燥のリスクがないため、小さくても生き延びられるのだろうと考えている。

 体が小さくなると、体積に対して表面積が大きくなり、水分が蒸発しやすくなる。カタツムリの場合、水分の多い体を殻の外に出して移動しなければならず、特に水分を失いやすいとエルスタン氏は言う。