読売新聞は4月、20政令市と東京都に制度の有無や運用状況をアンケート形式で尋ねた。その結果、札幌、新潟、名古屋、大阪、神戸の5市が利用上限額を設定するなど制度を見直し済みで、横浜、川崎、京都の3市が見直しを検討していた。千葉、静岡、浜松、広島の4市は2007年以降に制度を廃止していた。
 一方、仙台、岡山など6市と東京都は見直しを検討しておらず、さいたま、相模原の2市は元々制度を導入していなかった。
 制度を設けている自治体の負担額は今年度当初予算ベースで総額769億円。最多は東京都の199億円で、大阪など5市が50億円以上だった。

 国の統計では、65歳以上の人口は1975年に約887万人だったが、2020年には約3603万人に増えている。見直しや廃止と答えた自治体の多くは、パスの利用者増に伴う財政負担を理由に挙げた。

 名古屋市は今年2月、これまで無制限だった利用回数に上限(年730回)を設けた。1人で年2000回以上(運賃換算で40万円以上)利用する人がおり、利用回数の個人差を減らし、公平性を高めたという。

 見直しを検討している横浜市の制度では、所得に応じた自己負担額を払えば、70歳以上はバスや地下鉄が乗り放題になる。制度を導入した1974年の利用者は約7万人だったが、現在は約40万人に上り、今年度の市の負担額は47倍の136億円に膨らんだ。70歳以上の人口は、2020年の約76万人から41年には90万人となる想定で、市の担当者は「制度を維持できなくなる可能性がある」と危機感を募らせている。