日本国憲法は、一言一句変えてはならない、という立場ではありません。必要あれば、議論すればいい。しかし、その議論をする前提として、現行憲法が守られていることは絶対条件です。憲法25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」、とありますが、その約束はほごにされ続けています。

コロナ禍の前に行われた、厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、生活が苦しい世帯は、54% 、母子家庭では86%。その中にやってきた疫病から国民生活を救うための予算は、30兆円も執行されず余らせた、と批判されたのは当然で、生活者や事業者に対する支援を充実させず、

冷徹な態度を変えない政治は、異常です。

欧米諸国が大胆な経済政策によって、コロナ禍からの回復を進める中、日本は25年間の経済政策の失敗とコロナ拡大のWパンチであっても、政府の対応は中途半端、そこに戦争まで加わり、一段の資源高。手当をしなければ、ここからさらに苦境に追い込まれる人々の数は、増えざるを得ないでしょう。

この局面で最も優先すべき政治課題は、憲法改正ではありません。徹底した積極財政を行い、現法憲法の生存権を保障すること。政府は、経済対策を行うといいますが、全体での国費はわずか6兆円程度。事態を深刻に捉えていない楽観的な額と言わざるを得ません。今こそ、消費税廃止、ガソリン税はゼロ、社会保険料の国負担を増やすなど、大胆な通貨発行、生活者、事業者への底上げが急務です。

最後に、現在の国会における憲法改正の議論について。与党の提案している憲法改正は4つの項目、憲法9条(「自衛隊の明記」)、緊急事態、合区解消、教育充実、ですが、本命は一つ、あとはダミーです。本命は、緊急事態条項の創設です。

法律と同じ力を持つルールを、緊急事態時には政令という形で内閣が勝手に作れるようにする。むちゃくちゃ、危険です。25年もの間、経済政策をあやまり、労働環境を破壊し、人々の生活や事業の継続を不安定化させた結果、国を衰退させてきた者たちが、コロナという疫病が広がっても本気を出さず、戦争による物価高が襲い掛かってもしっかり対策さえ打たない。平成9年以降、これまでずっと緊急時であったにもかかわらず、ほぼ通常運転を継続する危機感のない者たちに、事実上の全権委任を許す、緊急事態条項は、絶対にダメ。国の破壊の総仕上げにしかなりません。

間抜けな政治を行ってきたものに、最大のフリーハンドを差し上げる緊急事態条項は絶対に阻止しなければならない代物です。憲法を変えるうんぬんの前に、現行憲法を守れ。さっさと積極財政で、人々の暮らしと事業者を守れ。それ以上でも以下でもありません。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c2dda391cca77b897316d049d675bfc3aa0d6915