2015年から暫定政府と反政府武装組織フーシ派との間で内戦が続く中東のイエメン。内戦関連の死者は37万人を超え、うち7割が5歳以下とされる。
「世界最悪の人道危機」と呼ばれるものの、国際社会の関心は薄く、飢えや病気が人々を追い詰める。国内避難民は街から街へと渡り歩き、若者は終わりの見えない戦闘に疲れ、国外に将来を見いだそうともがく。
2月下旬、暫定政府が臨時首都とする南部アデンを訪れた。
◆市街地に狙撃手が潜伏
 海沿いの小高い丘にあるとりでからは、アデン市街が見渡せる。険しい山々に囲まれて家やビルが立ち並び、遠目でも爆撃で破壊された廃虚ビルがいくつも目につく。「街は今も壊れたままです。内戦が始まって以来、身近に『死』があることに慣れてしまった」。記者にとりでを案内した市幹部オスマン・ナセルさん(42)が顔をしかめた。
2月下旬、イエメン南部アデンで、2015年の爆撃で破壊された建物。復興は進んでいない=蜘手美鶴撮影
 2015年3月下旬、フーシ派がアデンに攻め入り、追い込まれた暫定政府が隣国サウジアラビアに支援を要請。サウジ率いるアラブ連合軍が空爆を開始し、イエメンは長い内戦に突入した。市内を戦車が走り、フーシ派から街を守るため学生も銃を手に取った。市街地にはフーシ派の狙撃手が潜み、国際人権団体によると、少なくとも2000人が犠牲になった。
ナセルさんも自宅前でフーシ派に銃撃され、目の前で弟サーレハさん=当時(34)=を亡くした。「近くのホテルの窓から狙撃手2人がこっちを見ていた。住民のほとんどが親族や友人の誰かを失っている」。予算不足で現在も復興は進まず、壊れた建物は放置されたまま時間が止まっている。
2月下旬、イエメン南部アデンで、菓子や古着を配る男性の車に集まる国内避難民ら。国連の支援物資が届くのは3、4カ月に1度という
◆避難民押し寄せ人口200万人増

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