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欧米のビジネスジェット市場、コロナ禍で拡大

欧米でビジネスジェット(プライベートジェット)市場が拡大している。新型コロナウイルス禍で定期便の運航が減り、富裕層などの利用が増えたことで利便性への評価が高まった。日本は海外と比べ市場規模が小さく、利用は増えていない。

「明らかなパラダイムシフト(考え方の転換)が起きている」。米国などでプライベートジェットを運航するビスタ・グローバルのトーマス・フローア会長は強調する。同社の2021年の運航時間は前年比64%増え、新型コロナ禍以前と比べても57%増となった。コロナ下の減便などで定期便の運航が不安定になる中、ビジネス客がプライベートジェットに流入したことを一因に挙げる。

米連邦航空局(FAA)によると22年3月の米国発着などのビジネスジェット運航数は約49万便と、コロナ前の19年同月比で24%増えた。欧州ビジネス航空協会(EBAA)によると、欧州でも同じ期間に13%増え、3月は約6万1500便だった。米国では21年3月、欧州では同年7月から19年の同じ月を上回る。

国際航空運送協会(IATA)によると、22年3月の定期便の運航規模は北米で19年同月比87%、欧州で73%まで戻った。21年3月はそれぞれ59%と26%だった。定期便の復便が進んでも、ビジネスジェットの便数は高い水準を保っている。
背景にあるのが利便性の認識だ。ビジネスジェットは所有者以外でもチャーター便として利用できる。国内外でビジネスジェットのチャーター便の手配を手がけるANAビジネスジェット(東京・港)の野村良成・総務企画部長は「いちど利便性を実感し、継続的に使用する顧客が増えている」と見る。

日本発着のビジネスジェットは便数の回復が鈍い。航空機売買などを手がけるアジアンスカイグループ(香港)によると、東京発の便数は21年春以降1カ月あたり100便前後で推移し、コロナ前の月200便強と比べ半分にとどまる。

日本では利便性の高い空港や格納庫といった設備が不足しており、ビジネスジェットの機数が少ない。国土交通省の調べでは19年末時点で日本にあるビジネスジェットは61機と、国土面積が近いドイツの10分の1に満たない。富裕層が利便性を感じるほどの規模がないため、利用が進んでいない。