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第三 ロシア・ウクライナ戦争の結果と新たなる国際秩序

ロシア・ウクライナ戦争は、ヤルタ体制と冷戦の残滓に決定的な終止符を打ち、世界は新しい国際関係のパターンと秩序に向かって動き出した。
ソ連崩壊後、ロシアはソ連の国連安保理常任理事国、軍事大国としての地位を継承し、
国内の政治、経済、社会、文化、思想の面で旧ソ連の遺産と影響力の多くを継続、保持し、
ロシアの外交政策は旧ソ連とツァーリ帝国の混血であることを示した。

一 プーチン政権の外交政策の核心的かつ主要な方向性は、旧ソ連地域を自らの排他的影響圏と見なし、
ロシアが支配する様々な分野の統合メカニズムに依拠して帝国を回復することである。
そのために、ロシアは口先だけで約束を破り、他の旧ソ連諸国の独立、主権、領土の完全性を決して認めず、頻繁にその領土と主権を侵してきたのである。
これは、ユーラシア地域の平和、安全、安定に対する最大の脅威である。

この状況を一変させたのが、ロシア・ウクライナ戦争である。
ウクライナ独立後、特に2000年以降は、もともと国内では東方志向と西方志向を唱える2つの派閥がほぼ互角で、選挙を通じて交互に統治していた。
2014年にロシアがクリミアを併合し、東部を占領した後、国内で反ロシア感情が高まり、親ロシア勢力は縮小に向かった。
西側だけでなく東側でもウクライナ人の大多数がEUとNATOへの加盟を支持した。

この戦争の勃発後、ウクライナの状況は根本的に変わり、
国内のどの政党も、どの地域も、どの階級も、ロシア支持で団結することができなくなった。
ロシアはウクライナを完全に失ったといえる。
同時に、ベラルーシを除く旧ソ連諸国は、集団安全保障条約やユーラシア経済同盟の加盟国を含め、ロシアへの支持を拒否している。
ロシアは敗戦によって、かつての帝国を再建する可能性を完全に失ってしまったのである。
ロシアは、ツァーリ帝国あるいは旧ソ連の国際的地位と影響力を獲得し、既存の国際秩序を打破し、
ユーラシアと世界の地政学的地図を変えるために、旧ソ連諸国を統一し、連邦あるいは帝国を復活させることに執着しているのである。
そのため、アメリカ西側との根本的な対立・衝突が起きている。
これは、ロシアとアメリカ西側諸国との関係における主な対立点であり、ロシアがこだわる点でもある。

この問題をめぐる両者の争いは、ある種のイデオロギー的な側面も持つ米ソ冷戦の延長線上にあり、その名残であるとも言える。
この戦争を通じて、ロシアとアメリカ西側の対立と闘争は、ロシアの完全な敗北に終わった。
また、ポスト冷戦、あるいは冷戦の継続に最終的な終止符を打ったのである。

二 露・ウクライナ戦争後の国際秩序の展開について、いくつかの考えられる事柄を挙げてみる。

1 )ロシアは政治、経済、軍事、外交の面で著しく弱体化し、孤立し、処罰されることになる。ロシアの力はさらに弱まるだろう。
重要な国際組織から除名され、国際的な地位が著しく低下する可能性がある。

2 ウクライナはロシアの軌道と影響圏(ロシアがまだ影響圏を持っている場合)を離れ、ヨーロッパの家族、すなわち西側の一員となる。

3 他の旧ソ連諸国では程度の差こそあれ、脱ロシアの新しい傾向が見られ、一部の国では、より積極的に西側に向かう可能性がある。

4 日本とドイツは、第二次世界大戦の敗戦国から完全に解放され、軍備の発展を加速させながら、より積極的に政治大国の地位を目指そうとする。
しかし、西側陣営から離脱するわけではなく、平和的発展政策に完全に背を向けるわけでもない。

5 米国および他の西側諸国は、国連および他の重要な国際組織の実質的な改革を強力に推進し、
または改革が阻止された場合、別の組織を立ち上げる可能性がある。
どちらの場合も、いわゆる民主主義や自由のイデオロギーを基準としてラインを引いて、ロシアなど一部の国を排除するのかもしれない。



以上