渡米できぬ大統領に?フィリピン・マルコス氏、3000億円賠償の壁

9日のフィリピン大統領選挙で勝利したフェルディナンド・マルコス元上院議員(64)について、渡米できない大統領になるかもしれないとの指摘がフィリピンメディアで上がっている。
マルコス氏は長期独裁政権で反政府運動を厳しく弾圧した故マルコス元大統領の長男。米国の裁判所が当時の人権侵害に対する賠償金など23億ドル(約3000億円)の支払いを命じているのに対し、マルコス氏側はこれを拒んでおり、米国を訪れた場合、拘束される可能性があるためだ。
1989年のマルコス元大統領の死去後、マルコス政権が発令した戒厳令下で弾圧された人たちが、米ハワイ州に亡命していたマルコス一家に賠償を求めて現地の裁判所に提訴。
裁判所は95年の判決で人権侵害を認め、マルコス氏や元大統領の妻イメルダ氏(92)らに約19億ドルを支払うよう命じた。
だがマルコス氏らは「人権侵害はなかった」などとしてこれを拒否。未払いに対する罰金約4億ドルが加わり、支払うべき金額はさらに増えている。
フィリピンメディアは「マルコス一族が米国に入れば、賠償金の不払いに伴う法廷侮辱容疑で逮捕される可能性がある。一方賠償金を払えば、人権侵害を認めることになるため、支払うことはないだろう」と指摘している。
フィリピンでは、現職のドゥテルテ大統領も警官による容疑者殺害も辞さない麻薬撲滅作戦が米議会で批判的に取り上げられたことを理由に、渡米を拒否している。
https://mainichi.jp/articles/20220510/k00/00m/030/129000c