奨学金「出世払い検討を」 年収要件の緩和、政府教育会議が提言

 大学など高等教育の機能強化や学生への支援を進める政府の「教育未来創造会議」(議長・岸田文雄首相)は10日、卒業後の所得に応じて奨学金を返還する「出世払い」方式の制度創設案などを盛り込んだ1次提言をまとめた。公的支援の弱さが指摘されている中間所得層については、一部を給付型奨学金の対象にするとした。政府は今夏までに政策の工程表をつくる。

 学生が卒業後の収入や生活状況に応じ、奨学金や授業料を返還する仕組みはオーストラリアなどが導入している。一方、日本国内では、日本学生支援機構の貸与型奨学金を返還中の卒業生の大半が年収400万円以下にとどまり、結婚や出産などのライフイベントに伴って一時的に返還が難しくなるケースもあることから、会議では柔軟な返還方法を可能にする奨学金制度のあり方を検討してきた。

 提言で示した新制度は、現行では年収325万円以下の返還者が月々の納付額を減らせる「減額返還制度」の年収要件を緩和し、より広い層で返還額を調整できるようにする。現在、奨学金を返還している人でも利用可能な仕組みを検討する。また、大学院生向けには在学中は授業料を徴収せず、修了後に所得に応じた額を返還してもらう制度を設けるとした。

 中間所得層については、海外に比べ入学者の少ない理工系の学部生や、子供の多い世帯を、給付型奨学金の対象に加えるとした。

 提言ではこのほか、長期休暇制度の導入を通じて従業員の学び直し(リカレント教育)を進める企業への助成制度なども盛り込んだ。
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