中央銀行の「独立性」とは、政府(大統領、首相、財務大臣など)が、中央銀行の金融政策(とくに金利の水準や引き上げ、引き下げ)について「圧力」をかけないことを言う。「圧力」とは、たとえば金利調節について意見の異なる中央銀行総裁を罷免すると脅すことはもちろん、金利の上げ下げについて発言することも含まれる、との解釈が一般的だ。「金利の決定は日銀の専管事項である」というのが、中央銀行の独立性を言い換えたものである。

中央銀行の独立性が好ましい理由として、政府が往々にして、短期的な政策目的(選挙前の消費刺激、雇用の拡大など)を優先させてしまうことがあげられている。短期的政策は、長期的な経済の安定、インフレ率の急上昇などを通じて、金融市場の安定を損なうことがあるからだ。中央銀行が、中期的なインフレ率の低位安定を目標において、金融政策を決定することで、物価水準は安定して、長期的に成長や雇用にも良い影響がある、という理論に基づいている。

中央銀行の独立性が望ましい、という考え方は欧米の学界・政策の現場では、1980年代に主流の考え方となり、日本でも90年代には広く受け入れられることとなった。98年の日銀法の改正では、独立性を担保する条項が盛り込まれている。たとえば、総裁、副総裁および政策決定会合の決定権をもつ審議委員の任期を5年として、任期中は意見の違いを理由に罷免されることはない、とされた。

このように日米欧で、最近約30年間も揺るがなかった理論と実践が、欧米では、このところ批判にさらされている。
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