無双プレイから一瞬ですべてを失った時の悲しみが強すぎる。宇宙船を指揮して戦うローグライクゲーム『トライゴン』は、成長の喜びと喪失への恐怖が強烈な作品だった


 ローグライクというジャンルにのめり込む最初のカギは、刹那的な「無双」にあると思う。 

 何も知らない新しいゲームを初めて触ったときの、手探りの感触は好ましい。何が強いのか、何が定石なのか、知らないからこそすべてが新鮮に味わえる。そしてその中で、偶然手にした「強い」ものの魅力は果てしない。つい先ほどまでの強敵をたやすく蹴散らせるようになる圧倒的な力は、プレイヤーを虜にしてしまう。

 そして慢心がたたってあっさりと敗北し、やっとの思いで手に入れた強さを無残に失い、後に残るのは深い後悔のみ。『Dead Cells』でも『Slay the Spire』でも、そういった経験を何度となく繰り返してきた。だが、ひとたび手にした力は心に深く刻まれる。
 あの「無双」をもう一度味わいたい、今度はもっとうまくやれる、そんな想いが我々プレイヤーにリトライのボタンを押させてくれるのだ。

 今回ご紹介する『トライゴン: 宇宙の物語』(以下、トライゴン)は、宇宙を舞台にしたローグライク作品だ。本作の最たる魅力は宇宙船を指揮して戦う戦闘と、そこで実感できる成長の実感にある。時間をかけて強化し、優秀な乗組員を集めた自分の艦には、いつしか愛情にも近い形の満足を覚えるようになっていく。

 もちろん、その満足感ゆえに失ってしまったときの悔しさも計り知れない。だが、ゲームの基礎部分である戦闘が楽しいからこそ、ついつい何度もやり直したくなる。そんな成長と喪失のサイクルが生み出す、ローグライク作品らしい中毒性を持った『トライゴン』の魅力を、本稿では紹介していきたい。
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