https://www.tokyo-np.co.jp/article/166822

新しい女性支援法案の国会提出に向けて、各党の議論が大詰めを迎えている。法案の注目の一つが、売春防止法の「負のシンボル」とされてきた「婦人補導院」の廃止だ。婦人補導院は、売春で有罪となった女性が閉ざされた空間で生活指導を受ける場。近年は実態と合わなくなり施設はほとんど使われず、数十年にわたり廃止論がくすぶっていた。だが、なぜこれほどまでに廃止に年月がかかったのか。理由を探って見えてきたのは、この国によどむ「女性のあり方」そのものだった。
「あんなに屈辱的な場所ってあるのだろうか。売春に至った経緯や背景は見ず、福祉的支援が必要な女性たちを、犯罪者の目線で『更生』させるための場所としてあったのです」
 全国婦人保護施設等連絡協議会の横田千代子会長(79)は、婦人補導院が存続してきたことにそう憤る。
婦人補導院について話す全国婦人保護施設等連絡協議会の横田千代子会長
婦人補導院について話す全国婦人保護施設等連絡協議会の横田千代子会長

 婦人補導院は売春防止法違反の罪で、執行猶予以下の判決を受けた20歳以上の女性が「補導処分」として入る施設だ。
 6カ月間収容され、裁縫や調理、6カ月で成長する野菜の収穫体験など、生活指導や職業訓練を受ける。
 執行猶予以下の判決にもかかわらず、生活環境は刑務所に近い。重厚な扉には頑丈な鍵が外からかけられ、自由はない。1人用の個室の広さは3畳。部屋の立て板の向こうは便器がむき出しで、食事は小窓から配膳された。鉄格子の窓の隙間から小さな空が見えるだけだ。
 男を誘う女は、家事や正業に就く力がないのだから、国が隔離して自立できるよう支えてあげよう—。そんな発想ともいえるこの施設は1958年から、運用されてきた。