佐賀大のダイヤモンド半導体、世界最高出力を記録 米国学会が注目

 佐賀大理工学部の嘉数誠教授(61)=半導体工学=らの研究グループは10日、作製したダイヤモンドのパワー半導体が1平方センチ当たりの出力電力で875メガワットを記録したと発表した。ダイヤモンドとしては世界最高で、電子工学で権威のある米国電気電子学会の学術論文誌5月号に掲載され、注目論文として表紙を飾った。

 出力電力はオン、オフを切り替えられる値で、わずか指先ほどの大きさで、17万5千世帯の使用電力を制御できる計算になる。全ての半導体材料で比較すると、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)による窒化ガリウムによる2093メガワットの次に高い。嘉数教授は「窒化ガリウムの研究がメーカーや大学で盛んに行われている。われわれはダイヤモンドでMITの背中が見えるところまで来た。1、2年で超えられる」と話す。

 性能や耐久性に優れるダイヤモンド半導体は「究極の半導体」と呼ばれている。理論上で知られていた特性を、佐賀大とアダマンド並木精密宝石(並木里也子社長、東京)のグループが研究を通して次々と実証している。昨年4月に従来のダイヤモンド半導体の22倍となる1平方センチ当たり179メガワットを記録したと発表し、同年9月には345メガワットに達したと発表した。

 今回はこれまでの技術開発に加え、人工ダイヤモンドの表面を原子レベルで平坦にする新たな研磨技術で進化を遂げた。1年前に「5年以内の量産化」としていた実用化のめどは「順調に進んでいる」という。

 現在、地上にある携帯電話の基地局を人工衛星に移す計画が具体化しており、人工衛星搭載の送信用パワー半導体として最適という。宇宙空間は宇宙線と呼ばれる放射線が飛び交い、半導体が誤動作をしたり、半導体を壊したりする問題が起こっている。嘉数教授は「ダイヤモンド半導体は宇宙線への耐久性がある。宇宙であれば少々コストが高くても入って行ける」とし、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究を始める計画があると明かした。
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