■博士合取得者が減ったのは日本が終身雇用だったから
終身雇用を前提とした組織では、できるだけ若く伸びしろのある人材を採用して、自社に特化した形で育成することが基本となる。

伸びしろの有無は大学名で判断されるため、ポテンシャル採用という呼び方をされることもある。

こうした採用を行う組織からすると、どうしても修士以上は「伸びしろが少なく、自社にとって使い勝手の低い専門性しかない」と映ってしまう。

終身雇用型組織では、浪人や留年で3年以上寄り道している人間も敬遠されるが、これも根っこは同じである。

これに対し、終身雇用を前提としない組織では、自社でゼロからの人材育成なんてしないから、伸びしろやポテンシャルといった物差しがそもそもない。

(実際に採る採らないは別にして)博士だからとか歳を食っているからという理由で門前払いするようなケースはほとんどないように思う。

だが実際問題、日本を代表するグローバル企業はほぼ例外なく終身雇用型組織だ。そういう大手企業が博士を門前払いしつつ、ろくすっぽ勉強などしていないような学部生ばかりに内定を出し続けたら、博士課程を目指す人間が減るのも当然だろう。

以上が、日本が「低学歴国家」に落ち着いた背景である。

1990年代に、政府が音頭を取って大学院の重点化を推し進めた時期があった。博士を活かす組織内改革をスルーして「博士を諸外国並みに増やせば生産性も上がるだろう」とやってしまったわけだ。

結果は、博士課程は修了したものの、新卒採用に応募すると「博士は対象外です」と言われ、中途採用に行けば「職歴がない人は対象外です」と言われる高学歴な就職難民が量産されることとなった。

おそらく今回のニュースを読んで、当時を連想した人は少なくなかったのではないか。

とはいえ、今、日本は100年に一度レベルの大転換期にある。日本経済団体連合会が終身雇用・年功序列はもはや維持できないと白旗を掲げ、実際に少なくない数の大企業が脱・年功序列であるジョブ型雇用に舵を切っているからだ。
(一部略)

Jcast
2022年05月11日11時45分
https://www.j-cast.com/kaisha/2022/05/11436770.html

※「博士合取得者」は原文ママです