アスペルガー症候群の暴力性や犯罪性などに関して研究が行われている。米国で行われた研究では、犯罪を犯す前にアスペルガー症候群と診断された青年たちは、
一般比較群の犯罪者に比べて対人犯罪は2倍程度高く、対人暴力や学校における妨害行為が多く、財産犯や謹慎処分を受けた暴力は少なかったという結果が出ている[56]。
児童精神科医の清水康夫らが研究した児童の他害行為において、アスペルガー症候群の児童は、他害行為において「たたく」、「ものを投げる」、「蹴る」、「人を突き飛ばす」などの項目が一般保育園児童と比べて頻度が高かった[57]。
精神科医の杉山登志郎らが、あいち小児保険医療総合センターで継続的な関わりを持っている平均年齢9歳の265名では、素行障害・犯罪で警察に逮捕されたものは11名(4.2%)であった[58]。
また、精神科医のタンタムがアスペルガー症候群の60名について長期的な調査を行い、司法関係の情報が得られた54人の対象者を分析した結果、ほぼ半数の24名が少なくとも1回は犯罪事件を起こしていることが明らかになった[59]。

犯罪親和性
社会学者の井出草平は、元家裁調査官の藤川洋子らの家庭裁判所に送致される少年犯罪の中でアスペルガー症候群が占める割合を調べたデータ[60]と、DSM-5に掲載されている有病率を基にして、アスペルガー症候群の犯罪親和性を求めた[61]。
それによるとアスペルガー症候群の犯罪親和性は5.6倍で、ADHDの1.1倍や知的障害の2.2倍に比べて高いことがわかった[61]。
また、井出は家庭裁判所の医務室技官だった児童精神科医の崎濱盛三による調査[62]を利用して同様にして、アスペルガー症候群の犯罪親和性を求めた[63]。
その結果、アスペルガー症候群の確診での犯罪親和性は12.6倍、疑診も含めると28.6倍となった[63]。

諸外国では特別病院の入所者を対象とした調査がなされている。
スラッグらのイギリスの特別病院の入所者を対象にした調査[64]からは犯罪親和性は2.8~3.6倍と導かれ、イギリスのヘアの調査[65]からもほぼ同様の値となる[66]。
さらにスウェーデンの特別病院の入所者を対象にした調査[67]でも、アスペルガー症候群の数値は類似したものとなっている[68]。スウェーデンの研究ではスウェーデン
の犯罪の背景に少なくとも13%ほど広汎性発達障害が関係していると結論付けており[69]、そのデータから犯罪親和性を求めると犯罪親和性は10倍以上あったことがわかった[70][71]。
知的遅れ、高IQに限らず、自閉症スペクトラムは犯罪率が高いとの結果が出た。