地元住民が長年にわたり世界文化遺産登録へ向けて活動してきた結果、日本政府は先ごろ、佐渡島の金山を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦した。イワサキはこのニュースに喜ぶ。これで登録されれば、富士山や広島の原爆ドームに並んで、世界にその歴史を伝えることができるのだ。

佐渡の金山は、日本が鎖国していた2世紀半の間、江戸時代の将軍たちに貴金属を供給していた。しかし、その歴史のなかには、イワサキがほとんど知らない暗部もある。第二次世界大戦中、日本の植民地支配下で約1500人の朝鮮人が徴用され、この鉱山で働かされていた歴史だ。
「私たち世代の人間は、そのような労働者のことについて知りません」とイワサキは言う。

日本では、そうした歴史は往々にして忘れ去るのが最善とされるか、少なくともすでに決着がついた過去のこととして片づけられがちだ。しかし韓国では、35年にわたって日本に占領された歴史の傷はいまだ癒えておらず、ゆえに佐渡金山は両国間の新たな火種となっている。

1月末、日本の岸田文雄首相が佐渡金山の世界文化遺産登録を目指すと発表すると、韓国政府は「強制労働の痛ましい歴史に目を背けている」と非難し、ユネスコへの推薦撤回を求めた。これにより両国は、日本が金銭的補償だけでなく、記憶と真実において植民地時代の残虐行為において充分に償いをしてきたかどうかをめぐり再び争うことになった。

佐渡金山の問題は、すでにここ数十年で最悪の状態になっている日韓関係をさらに悪化させている。アメリカは中国の台頭や北朝鮮の核の脅威に対抗するためにも、日本と韓国という2つの同盟国に関係修復を促しているが、溝は埋まっていない。https://courrier.jp/news/archives/279953/