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4630万円誤送金事件 経験者が出金記録から分析する「田口容疑者のオンラインカジノ無間地獄」

「資金洗浄説も浮上していますが、病的なギャンブラーがオンラインカジノで4630万円を僅か11日間で溶かしてしまうことは、ありうると思います。彼の出金記録を見ていると、必死になってギャンブルと格闘していた姿が目に浮かんできます」。こう語るのは、オンラインカジノにハマり、2~3カ月間で300万円もの大金を失った経験を持つ男性である。
665円しか残高がなかった口座
 Aさんは40代のサラリーマン。今は立ち直ったというが、長い間、ギャンブル依存に苦しんできたという。

「入り口は大学時代に覚えた麻雀。友達とワイワイやっていた頃は楽しかったんですが、一人でフリー雀荘に通い始めてからおかしくなっていった。パチンコ、競馬、ありとあらゆるギャンブルに手を出してきましたが、最後に行き着いたのがカジノです。きちんと数えたことはありませんが、ギャンブルで2000万円くらいは負けたと思います」

 Aさんがまず注目したのは、当初、田口翔容疑者(24)の口座の残高が665円しなかった点だ。

「お恥ずかしい話ですが、つい数年前まで私も同じでした。病的なギャンブラーは、有り金すべてをギャンブルに費やしてしまいます。1000円あればパチンコで最後の勝負が出来ますからね。おそらく彼には借金があったのでしょう。取り返さねば、という強迫観念に支配されながら、日々を過ごしていたのではないかと推測します」

印鑑を購入していた
 現地取材でも、田口容疑者がパチンコ好きで、1日に数万円も使っていたという証言が得られている。勤務先のホームセンターから得ていた給与は約25万円。自転車操業だった可能性もある。そんな彼に突如舞い込んできた“チャンス”が、山口県阿武町が誤送金してしまった4630万円だった。

 Aさんはこう強調する。

「ギャンブルの経験がない人は、彼が4630万円を天から降ってきたと考え、最初から使い果たすつもりだったと思うかもしれません。しかし、私は違うと思います。彼は、この大金を種銭にしようと思いついたのではないか。『ひとまず借りて、増やしてから返そう』と。ギャンブラーは常にギャンブルをしたくてしょうがないのですが、目的は負けることではありません。勝ってお金を増やしたい。いや、勝ってこれまでの負けを取り返したいのです」

 確かに、4月8日、町の職員が誤振込みに気づいて自宅を訪れた時、田口容疑者は「風呂に入っている」と職員を待たせはしたが、最終的には銀行で組戻し作業をすることに納得し、その日のうちに阿武町から90キロも離れた宇部市の銀行支店まで職員の車で向かっている。副町長によれば、道中で彼は印鑑も購入していたという
5000ドルから勝負は始まった
 だが、片道2時間かけて行った銀行の玄関に立った時、田口容疑者は、突如、「今日は手続きしない」と翻意したのだ。そして、その日からデビットカードで、カジノ口座に金を動かし始めたのである。

 最初の金額は67万8967円。1日おいて4月10日には、68万526円を2回と、125万6441円を動かした。

「海外のオンラインカジノはドルで決済するので、このような端数が出たのでしょう。彼はまず5000ドルで勝負をしたのではないでしょうか。最初から全額をマネーロンダリングするつもりだったとしたら、限度額ギリギリを出金したはずです。いつ何時、差し押さえられるかもしれない状況にあるのですから」

 Aさんは、その時の田口容疑者の心理をこう読み解く。

「具体的な目標額はわかりませんが、数十万円くらい勝って浮き分を確保してから、元金を返すつもりだったのではないか。私も家の貯金や妻のクレジットカードに手をつけたことは何度もあります。最初は数万円です。でも、それが重なり、やがては一気に取り返そうとして、桁が増えていくのです」

34連敗の謎
 翌11日には、5000ドル相当の金を2回動かした後、1万ドル相当の金を4回動かした。12日には決済方法を変えたため、300万円、400万円と端数のない大金を2回動かしている。

「出金ばかりで入金がなかったから、彼がずっと負けっぱなしだったと思われている節があります。入金ごとの単位で見ると彼が連敗していたのは事実ですが、1日の中で短期的に勝っていた瞬間もあったに違いありません。最初のうちは、いきなり入金した全額をバカラ(2分の1の確率にかける丁半博打のようなギャンブル。1回のゲームは1分もかからない)に突っ込むような賭け方はしていなかったと思います。1万ドルが1万5000ドル、2万ドルくらいになっていた瞬間もあったでしょう」