近年のスマートフォンでは、iPhoneだけでなく、Android端末でも外部メモリスロットを使用できない機種も多く存在している。その理由はなぜか、考察したい。

 2021年、日本でキャリアが発売した10万円以上のスマートフォンにて、外部メモリスロットを利用できる機種は、ソニーのXperiaシリーズとシャープのAQUOS R6(ソフトバンクより発売のLEITZ PHONE1を含む)にとどまった。SIMロックフリーで展開されたハイエンド機でもASUS Zenfone 8 Flipに限られる。

 ハイエンドと呼ばれるスマートフォンで外部メモリスロットが利用できなくなりつつある理由としては端末の性能の向上、スマートフォン本体のスペース確保の難しさなどが挙げられる。

 かつてはmicroSDを内部ストレージ化できることもあったが、速度差を理由にパフォーマンスの低下にもつながるため、現在ではあまり推奨されていない。

 microSDはあくまで写真や動画といったメディアの保存領域なので、高速である必要はない。そのように思われがちではあるが、動画撮影に関してはそうも言っていられない現実もある。

 各種音楽ストリーミングサービスの台頭、高速通信網の整備による動画配信などが当たり前になりつつあり、以前のように「microSDに音楽や映画を入れて持ち歩く」ことも減ってきている。

 撮影した写真や動画もクラウドサービスへアップロードして、どの端末でも閲覧できることも一般化しつつある。iPhoneだと「iCloud」がおなじみで、iPhoneに最適化されたシームレスな挙動が売りだ。

 かつてのような「アプリは本体ストレージ、写真や動画はmicroSD」という考え方は廃れつつある。microSDは上記に記した通り速度面のネックになる点もある上、故障率も本体ストレージに比べて高い。

 特にハイエンド端末においては最低容量が128GBとなり、iPhoneを始めとした機種では1TBの容量を持つものも現れた。サムスン電子やXiaomiのハイエンド機種も、海外では複数の容量にて展開しており、ユーザーが必要に応じた容量で選ぶことができる。

 現在のトレンドとしては「アプリは本体ストレージ、写真や動画はクラウドサービスに自動バックアップ」へと各社移行している。端末の容量も最低128GBがスタンダードになりつつあり、世界的にはハイエンド端末で「microSDが必須」という状況ではなくなってきている。メーカーとしてはハイエンド端末で128GBの容量+自社や提携のクラウドストレージを利用するか、より大容量の機種を選ぶかという所だろう。

 日本ではメーカーが考える売り方と、キャリアの展開方法がどうにも合わないところがある。キャリアの意向もあって、基本的にAndroid端末では容量は1種類の展開となる。加えてXperiaのように、キャリア向けモデルの容量がSIMロックフリーモデルよりも少なくなっている機種もある。

 「microSDが使えるからAndroid端末を選ぶ」という選び方も、このような流れが続けば数年後には選択肢が少なくなると考えられる。microSDを利用できる点はAndroidスマートフォンを選ぶ理由の1つともいえた部分だが、この考え方が主流だった時代から変わりつつあるといえる。

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