えっ、1泊100万円の部屋が好調なの? 「稼働率が70%を超えた」衝撃

 岩手県の北西部に位置する「安比高原リゾート」が“ざわざわ”している。このリゾート地には、ブナやダケカンバといった原生林があるので、樹や葉が揺れて“ざわざわ”と聞こえてくる、といった話ではない。2022年2月、高級ホテル「ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート」(以下、安比インターコンチ)をオープンしたところ、「泊まったよー」「早く泊まりたい」といった人たちが増えていて、“ざわざわ”しているのだ。

安比高原のことも、安比インターコンチのことも、よく知らない人がいると思うので簡単に紹介しよう。安比高原の魅力は、なんといっても雪質にある。世界中のスキーヤーから「奇跡のシルキースノー」と呼ばれていて、12~4月には乾いた雪が降り積もる。ゲレンデの総面積は282ヘクタールあって、合計21のスキーコースの距離は45.1キロメートルもある。ちなみに、この数字は国内平均の2倍ほど。コースの平均距離は2.1キロメートルで、ほぼすべてがロングコースなのだ。

 じゃあ、雪が溶けると、どうなるのか。敷地は緑に覆われているので、夏模様に衣替えする。リゾート内でゴルフ、テニス、サイクリングなどを楽しめることができるのだ。……と、このようなことを書くと、「なんだかバブルの香りが漂うなあ」と思われたかもしれないが、その通りである。1970年代の後半から、リクルートの創業者である江副浩正が、社員研修施設としてゴルフ場などをどんどん開発していったのである。

 国内にインターコンチのブランドを掲げているホテルは6施設あるが、安比はどのような特徴があるのだろうか。全38室あって、客室は7タイプある。建物は3階建てなので、大きなホテルに慣れている人からは「こじんまりしているね」といった印象をもたれるかもしれない。施設内には、レストラン、クラブラウンジ、温泉大浴場、ジムなどがある。

 このように書くと、「特徴らしい特徴はなさそうだけど。ひょっとして、特徴がないことが特徴?」と感じられたかもしれないが、宿泊料金を聞くと、懐が“ざわざわ”する人がでてくるはずである。最も安い部屋で、1泊7万円からである。このほかに、15万円の部屋もあるが、最も高い「プレジデンシャルスイート」(2人)は、1泊100万円からである。

 出張の際に「どこに泊まろうかな。ここのホテルは9000円か、ちょっと高いな。あ、こっちは8500円! ここにしよう!」といった100円単位の攻防を繰り広げているビジネスパーソンにとっては、ちょっと信じられない話かもしれないが、100万円部屋の稼働率は想定以上の数字が出ていて、5月は70%を超えたのだ。

 安比インターコンチの隣にあるホテルにも、1泊50万円ほどの部屋がある。盛岡の駅からクルマで1時間ほどかかるこのリゾート地に、1泊50万円もする部屋があるの? と失礼ながらに感じてしまったが、関係者に聞いたところ「利用者はそれほど多くはない」とのこと。そうした状況なので、業界関係者からは「100万円の部屋に泊まる人なんて、そんなにいないよ」などと冷ややかな目で見られていたが、予想を上回る形で利用客がここに来ているのだ。

 ところで、100万円の部屋はどんな間取りをしているのだろうか。取材したところ、広さは306.90平方メートルである。部屋の中に入ると、10平方メートルのエントランスがあるので、一人暮らしをしている人からは「オレはその広さで生活をしているよ」と思われたかもしれない。

 先に進むと、天井の高さ5メートルの部屋がある。広さは110平方メートル。部屋には、長方形の大きなテーブルがあって、椅子10脚が並んでいる。反対側にはL字のソファがあって、巨大なテレビーがどーんと設置されている。その奥にベッドルームがあって、広さは20平方メートル。ベッドが2つあって、ソファが備えられている。

 部屋の中にある階段をのぼっていくと、ルーフバルコニーがあって、そこにもソファが用意されている(お金持ちはソファがお好きなのかしら?)。このほかにも専用キッチンがあったり、ひのき風呂があったり、トイレが3つあったり。なにもかもが規格外といった感じであるが、部屋の中に専用エレベーターが設置されていることにはびっくりである。

 2人で利用するにはちょっと広すぎるのでは? トイレは3つもいらないでしょ! と思っていたが、ホテルの関係者に聞いたところ「友人や知り合いなどを呼ばれて、パーティーをされている方が多いですね」とのこと。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f5adde3ef0b5c9dad49d2ec1ada92d13a6454c18?page=1