ロシアは「悪者」か?
2022/6/1

人あるいは国の行為も、善か悪かに二分することは、多くの場合、難しい。灰色のグラデーションのように善者と悪者の間に善悪グラデーションがあるのかもしれない。

しかし、数多くの紛争・戦争のなかで、今回のロシアによるウクライナ侵略ほど、はっきりと一方に非がある(悪者である)例は少ないと思う。ウクライナによるロシア領内への先制攻撃があったわけではない。一方的にロシアがウクライナに攻め入った。これは明確な国連憲章違反である。

東京大学の入学式祝辞で、河瀨直美映画監督は「例えば『ロシア』という国を悪者にすることは簡単である。けれどもその国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか。なぜこのようなことが起こってしまっているのか。一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか?誤解を恐れずに言うと『悪』を存在させることで、私は安心していないだろうか?」と述べた。
これはちょっと違う。ロシアが「正義」と言っていることは、国際法上、人道上、基本的人権上、どのように見ても、「正義」ではない。ウクライナは一方的に侵略された被害者であり、ロシアは加害者である。国連の決議はそれを示している。今回の侵略に関しては、はっきりとロシアを糾弾することが、正しい選択だ。けんかの原因究明をしない「けんか両成敗」的発想こそが、安易である。

ウクライナで起きていることを、アジアに置き換えて考えることも重要だ。将来、ウクライナのようなことがアジアで起きたとき、欧州の人たちから「正義と正義のぶつかり合いで一方を悪者とは決めつけられない」という発言が出たら、そのときの日本人がどのように感じるか、考えてみたほうがいい。

いま、国際法違反をしているロシアに対してきっちりと経済制裁を加えて、ロシアに自らの国連憲章違反の軍事行動を後悔させることが、将来の東アジアにおける、現状変更を目指す軍事行動の抑止につながることを、しっかりと認識する必要がある。

https://forbesjapan.com/articles/detail/47851/2/1/1