【EQの提唱者が20年以上取り組むプログラムの驚くべき効果】「21世紀の教育」が目指す中核的能力

環境問題、社会的な分断といった難問だらけで正解を見つけるのが難しい時代。
「知識詰め込み型の教育の限界。これからの子どもたちにはもっと人間らしい教育を……」。
そう感じる人は多いだろう。2人の世界的権威であるダニエル・ゴールマン(『EQ こころの知能指数』)、
ピーター・センゲ(『学習する組織』)もそう考えて、長年教育分野に貢献することに情熱を注いできた。
その2人による共著『21世紀の教育 子どもの社会的能力とEQを伸ばす3つの焦点』(ダイヤモンド社)の内容から、
新時代の世界標準の教育のイメージをお伝えする。今回は、ダニエル・ゴールマンによるEQを基礎とする教育の効果について。(監訳:井上英之)

調査が示すSEL(社会性と感情の学習)の科学的効果
 もう30年も前のことになるが、私は感情的知性(Emotional Intelligence:日本ではEQと呼ばれる)を伸ばすための
先駆的な取り組みを行っている、ニューヘイブン(コネチカット州)の公立学校を訪問した。

 ニューヘイブンは、イェール大学がある一角を別にすれば、貧困が支配する街だ。10代の少女が未婚の母となり、
その子もまた10代で未婚の母になる。少なくない人々がフードスタンプ〔食料費補助〕に頼って暮らし、
成功モデルはドラッグの売人というような、生きていくのが容易ではない場所だ。

 市長は、市の状況を憂慮する100人ほどの市民タスクフォースに集まってもらい、こう語りかけた。

その投げかけを受けて、イェール大学の心理学者ロジャー・ワイスバーグが開発したのが、
この地域の学校に導入した「社会性発達(ソーシャル・デベロップメント)カリキュラム」だ。
いまでは世界的なムーブメントとなっている「社会性と感情の学習、もしくはSEL」と
呼ばれるプログラムの先駆けの一つである。

今日、世界中の何千校もの学校がSELを導入し、何百種類ものプログラムが実施されている。
最近、SELプログラムを導入した学校としていない、学校を比較した各種調査のメタ分析が行われ、27万人の生徒に関するデータが集められた。

この大がかりな調査の結果、SELプログラムには顕著な効果があることが判明した。
向社会的行動(クラスで適切に振る舞う、学校が好き、出席率が良好など)が10%向上し、
反社会的行動(クラスで不適切に振る舞う、暴力、いじめなど)はどれも約10%低下した。

何より興味深いことに、学力テストの点数も11%向上していた。それも、全般的に見て社会的行動や学力の点で
問題を抱えていた学校ほど、はっきりと効果が出ていることがわかったのである。

以下ソース
https://diamond.jp/articles/-/300089