――日韓は近似点の多い国です。フェミニズムをめぐる今後の潮流について、どう見ていますか。

ミン 両国は本当にいろんな面で似ていると思います。同じ東アジアで、歴史もいろいろ絡んでいるから、互いに大きな影響を与えていると思います。ミソジニー文化もとても似ている(笑)。でも最近、変化を感じるのは、「文学」や「フェミニズム」、特に二つを合わせた「フェミニズム文学」の分野で、韓国から日本に大きい影響を与えているように思えることです。私が留学中の2000年代、日本でこんなに韓国作家の作品が翻訳され、読まれるなんて想像もできなかった。むしろ以前は日本からの影響力が大きかった。

『82年生まれ、キム・ジヨン』が広く日本で読まれてから、これをきっかけに日本で韓国の若い女性作家たちの作品が活発に紹介されるようになりました。韓国では江南の事件以来、フェミニズム運動とフェミニズム文学が発展しました。その中で、力量ある女性作家が成長し、良い作品が次々と出ています。このような韓国の現在に興味を持ってくださる日本の方々が、「韓国の方が先を行っている」と言ってくださるのを聞き、嬉しい半面、複雑な気分になります。

――不幸な事件が契機とはいえ、韓国には覚醒した人々がたくさんいる。皆さんから学ぶべきことがたくさんあります。

ミン これからも頑張ろうと思いつつ、実際はバックラッシュでとても苦しいことも多いし、韓国もまだまだ足りない面がいっぱいあります。日本の映画界の性暴力のことなどを見ていると、韓国でもまさに同様のことがあったので、他人事とは思えないのです。日本の女性たちがどれほどの困難と向き合っているのか。日本社会の責任ある対応を期待しています。日本のフェミニストと連帯し、役に立ちたい。この本をきっかけに、たくさんの方々と出会えました。これからも日本の方々と話し合いながら、それぞれの国で経験するいろんな問題を一緒に乗り越えるフェミニスト仲間になりたいです。

お話を聞いた⼈
ミン・ジヒョン
1986年、韓国生まれ。西江(ソガン)大学校で国文学と新聞放送学、日本学を学ぶ。2008年、日本に交換留学した際には東北大学の学友会映画部に所属し、自主映画「あんにょん、サヨナラ」を制作した。韓国芸術総合学校の映像院映画科大学院で劇映画シナリオを専攻。2015年、「朝鮮公務員 呉希吉伝」で「大韓民国ストーリー公募大展」優秀賞を受賞し、2019年にはテレビドラマ「レバレッジ-最高の詐欺師たち-」の脚本を執筆。映画とドラマの現場で脚本家を務めながら、「韓国映画性平等センター」に所属し、性暴力予防教育講師としても活動中。2019年5月、本作を刊行。

加藤慧(かとう・けい)
1986年、日本生まれ。東北大学工学部を卒業。同大学院博士課程科目修了退学。2013年に漢陽(ハニャン)大学校大学院に交換留学し、韓国建築史を学ぶ。現在はオンラインで韓国語レッスンを行うほか、大学非常勤講師として韓国・朝鮮語の授業を担当。