全国で「艦これ」特需、海自基地のある港町に目立つ「提督」の姿…プレーヤー460万人超
2022/06/11


 海上自衛隊の基地がある港町に若者の姿が目立っている。艦船を擬人化したキャラクターが戦うオンラインゲーム「艦隊これくしょん」(艦これ)に登場する舞台を、「提督」と呼ばれるファンが訪れているためだ。プレーヤーは全国に460万人超おり、自治体などはコラボ企画を打ち出し、地域経済の活性化を狙う。

戦艦大和が建造された広島県呉市で4月23、24日、艦これの声優らによる音楽公演などがあり、延べ1万人が訪れた。福井県大野市の男性(22)は「潜水艦を間近で見られる公園など、イベント以外にもくぎ付けになる所が多い」と滞在を満喫していた。

 2020年、21年にはコロナ禍が直撃し、呉市の「大和ミュージアム」でも例年約100万人の来館者が25万人台に低迷する中、街は艦これ特需に沸いた。

 JRは呉―広島間で臨時列車を運行し、駅にコラボパネルを掲示。商店街は「おかえりんさい。提督さん」と記したポスターを貼り、20以上の飲食店が艦これの名前を冠した海軍ゆかりのカレーなどを提供し、宿泊施設もほぼ埋まった。

 実は19年の同様のイベント時、商店街は艦これ人気を把握しておらず、商機を逃した。その後「あのすごいイベントは何じゃったん?」などの声が上がり、
市は今回、市制120周年記念事業の一環でイベントに協力し、街全体で受け入れ態勢を整えた。市観光振興課は「繰り返し訪れてもらえるよう、今後も『提督』が満足するプログラムを考えたい」とする。


 一般社団法人「アニメツーリズム協会」が選ぶ「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」は18年から毎年、呉市のほか、長崎県佐世保市など五つの港町を艦これ部門の聖地に選出している。

 各地で関連イベントが開かれ、京都府舞鶴市は昨年12月から地元ゆかりの軽巡洋艦「由良」がモデルのキャラクターが描かれた卓上飾りなどを限定販売。京都丹後鉄道は今月25日から、ラッピング列車を運行する。

 思わぬ形で人気に火がついたのが、特産のカニが水兵の格好をした舞鶴観光協会のキャラクター「チョキまる」だ。今年3月、神奈川県内のイベントに出演すると、関連グッズが飛ぶように売れ、過去最高の売り上げになったという。

 観光ビジネスに詳しい千葉千枝子・淑徳大教授は「若い世代では、ゲームやアニメの『聖地巡礼』が日常化しているが、ヒット作は次々と入れ替わる。
一過性の人気で終わらせないためにも、自治体や住民らが協力し、ファンを長期的に受け入れる環境を整備することが重要だ」と話す。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/subcul/20220611-OYT1T50223/