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殺人2件、強制わいせつ2件で服役合計30年……「ある性犯罪者」衝撃の告白
なぜ繰り返すのか
「もう刑務所には戻りたくない。本当です」
しかし、と男は言葉を継いだ。
「2度とやらないという自信はありません」
2019年2月、長崎拘置支所の薄暗い面会室で記者と向き合った男は、うつむいたままつぶやいた。
160センチに満たない男は、小さな背中を丸めてさらに小さくした。冷たいパイプ椅子の感触に体と声を震わせる姿は、弱々しい老人そのものだ。とても他人に危害を加えるような人物には見えない。
男の名は寺本隆志(67)。18年6月、長崎市内の路上でたまたま通りかかった7歳女児のスカートを、いきなり背後から引きずり下ろして転倒させ、両膝に打撲を負わせたほか、別の女児の下着や運動靴を盗んだとして強制わいせつ致傷や窃盗の罪に問われ、当時は長崎地裁での初公判を待つ身だった。
今回が初犯ではない。過去に何度も性犯罪を繰り返し、罪なき女性を傷つけてきた。刑務所で暮らした歳月も長い。
1992年、東京都北区で妻子と同居していた寺本は、同じアパートに住んでいた女子中学生を刺殺。さらに、逃亡先の長崎市でも別の女子中学生の体を触った上で、高層マンションの踊り場から突き落として殺害した。
約20年の服役を終えて出所すると、移り住んだ広島市で13年、強制わいせつ事件を起こして懲役4年の実刑判決を受けた。そして再度の出所後、半年もたたずに今度は長崎でまた逮捕されたのだ。
2人の少女を殺害した過去から、寺本の名を知らない長崎県警の関係者はいない。普段はオフレコの前科情報がすぐに出回り、共同通信長崎支局で事件担当をしていた記者の耳にも入った。
経緯が気になった記者は、寺本の過去の事件について調べた。すると、当時の新聞各社は、「寺本は極刑を希望」と報道していた。
少なくともその時は死を望むだけの悔恨があったはずだろう。なのに、寺本はなぜ生き永らえ、出所後に同じ過ちを繰り返してしまったのか。長年にわたる獄中生活は、更生の役に立たなかったのか。寺本の心情に迫るために、接見と手紙のやり取りを重ねた。
衝動が抑えられない
19年2月、最初の接見に応じた寺本はグレーのジャケットを着込み、眼鏡を掛けた顔を下に向けてとぼとぼと面会室に入ってきた。整った短髪に白髪は見当たらず、実年齢よりも少しだけ若く見える。初対面の記者の姿を認めると、律儀に何度も頭を下げた。
拘置支所での面会が許される時間は1日30分のみ。寺本は、その間ずっとカーキ色のハンカチを両手で持って口元に当て、記者との間にあるガラス窓に顔を近づけてぼそぼそと話した。このスタイルは毎回、変わらなかった。表情や語り口は柔和だが、目はほとんど合わせようとしない。
自己紹介もそこそこに取材の趣旨について説明すると、寺本は深くうなずき、丁寧に言葉を選びながらこう説明した。
「精神的なストレスがたまると気持ちが落ち込み、やけっぱちになってしまう。すると心のコントロールを失って過去に自分がやった犯罪のことを思い出し、性的な衝動を抑えられなくなります」
幼い女の子が好みなのか、と尋ねると即座に否定された。
「決してロリコンではありません。同年代と仲良くなることもあったし、成人した女性の方が良い。でも性犯罪で狙うとなると、大人は私の体力的に厳しい。だから小さい子どもを標的にしてしまう」
そしてゆっくりとした口調で、これまでに起こした事件や自身の半生について語り始めた。
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