新型コロナウイルス対策のための休校やリモートワークが家計の姿を大きく変えている。光熱費、水道料金、トイレットペーパー代……家族の在宅時間増でかさむコストは少なくないが、筆頭格は食費だろう。4月7日発表の2月の家計調査で食費は約7万5000円と1年前から4.2%も増えた。4%強の伸びは7年ぶりの大きさだ。
こうなると注目されるのがおなじみ「エンゲル係数」。消費に占める食費の比率で算出され、貧しい家計は同比率が高いが、豊かになるにつれ低下するという「エンゲルの法則」が有名だ。生命維持に欠かせない食費は収入にかかわらず必要で、その比率が高いということは他の支出に回す余裕がない状態を示す。

世帯構成や生活習慣でも変化するため、単純な国際比較などにはなじまない面もあるが方向性はおおむね正しい。日本が経済大国になる軌跡でもほぼ法則通り。戦後間もない頃、60%台だったエンゲル係数はその後の経済成長と共に右肩下がりに。2000年代前半には20%台前半まで下落した。

そのエンゲル係数が2月、34年ぶりの水準に跳ね上がった。2人以上の勤労者世帯の数値が25%台になったのは1986年以来のこと。あくまで単月の数字ではあるが、緊急事態宣言を受けた「巣ごもり」化を勘案すると通年でも一段の上昇がありうる。三十有余年の経済成長を巻き戻すほど家計は「貧しく」なったのか?

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58515880W0A420C2I00000/