「AIで人口減に対処」なんて笑止千万

 日本の生産年齢人口(15~65歳)が減少に転じてはや25年余、その減少幅は1250万人にもなります。対して産業界は以下の3つの方法で人材不足をしのいできました。

1.衰退産業からの人材流出
2.女性の労働参加
3.高齢者の就労継続

 ところがこの3つの補充策のどれもがもう、枯渇した状況となっています。衰退産業は就業人口が底打ちして、逆に人材不足感が高まり出しました。女性の労働参加は量から質への転換期であり、正社員総合職や管理職などは増えていきますが、非正規従業者は減っていく。そして、高齢者は働き手として有望な前期高齢者が激減し、後期高齢者のみ大幅に増えていく……。前回はこんな実態を取り上げました。上記の人材が担っていた流通・サービス業などの非ホワイトカラー領域に、とてつもない人材難が押し寄せることが火を見るよりも明らかなのです。

 こうした苦境への新たな対策として「AIやITを活用した省力化」が叫ばれています。ただ、そんな主張をする“識者”のほとんどは、労働・雇用の門外漢なのです。雇用領域の専門家や、流通・サービス業の当事者の多くは「そんなに簡単にはいかない」と口をそろえています。

 今回は、「非ホワイトカラーの人材難は、AIやITではなかなか解決しない」、とりわけここ10年の中期スパンでは難しいという話を書くことにいたします。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00035/033000003/