新型コロナウイルス感染症の致死率に関する直近の統計で、日本が首位に立った。世界の裕福な国々の中で日本の致死率が最も低い理由について専門家が指摘するのは、マスク着用の継続やワクチン接種率の高さ、長寿大国といった基本的な事実だ。

  今も世界のさまざまな地域で感染症拡大は起きている。だが、日本では人混みや換気の悪い場所を避けるなど、基本的な感染対策を人々がしっかりと守ってきた。
その上で、政府のワクチン接種プログラムが着実に実施され、致死率を抑える結果につながった。

日本の状況が中国などアジアの近隣諸国と全く異なる点は、都市封鎖(ロックダウン)もせずに低い致死率を維持したことだ。そもそも日本にはロックダウンを可能にする法律がなく、実施は難しい。緊急事態宣言下での行動制限も、根拠になったのは政府による要請だけだった。

  角度を変えて見ると、こうした柔軟な方法を取ったからこそ日本は機能したとも言える。貧困や飢餓、天候問題など世界的な課題をデータで扱う「Our World in Data(OWID)」によると、人口100万人当たりの新型コロナ死者数で日本は246人と、
経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国の中で最も少ない。入国規制を撤廃したニュージーランドは、直近で100万人当たり257人と日本を抜いた

国立国際医療研究センターの医師で東京都の医療アドバイザーを務める大曲貴夫氏は、「個人単位での感染防止対策の遵守は、日本の感染対策において重要な役割を果たしている」と話す。
政府や自治体はソーシャルディスタンスなどを呼び掛けたものの、人々の自主性にも任せたことが奏功したという。

  それはマスクの着用でもうまくいった。政府が屋外でのマスク着用を緩和した今も、日本ではどこへ行ってもマスク着用が守られている。ワシントン大学にある独立保健研究機関の保健指標評価研究所のデータによると、
日本のマスク着用率は90%以上で、時折この水準に近づく他の主要7カ国(G7)各国とは比較にならない。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-20/RDR3XKT0G1KW01?srnd=cojp-v2