https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/65015

「子供がほしい」“男性同士”のカップルに宿った新しい命 からだは女性、こころは男性、でも産むために戸籍は女性…性別は誰が決めるのか

■こころが男性同士のカップルに新しい命「早く会いたい」
北海道・千歳市に住む、29歳のきみちゃん。からだの性は女性だが、こころの性は男性のトランスジェンダーとして生きている。
きみちゃん
「好きになる性は男女関係なく、好きになった人が好き」
きみちゃんのパートナーである、33歳のちかさんはからだもこころも男性。2人は“男性同士”のカップルだ。
ちかさん
「ひとりの人間として優しいし頼りになる」
お互いの性別は意識せず、惹かれあったという。
2021年、きみちゃんのお腹に新しい命が宿った。11月時点で妊娠8か月となっていた。
きみちゃん
「自分が妊娠するというのを考えていなかった部分が強い。想像していなかった。性別は女の子です。早く会いたいなって」
■日本ではまれなトランスジェンダー男性の妊娠 社会の壁は…
トランスジェンダーの男性の妊娠。日本で公になったケースはまれだという。2人は心無い言葉を受けたこともある。
きみちゃん
「父親とか母親っていう概念がどうなんだとか、子どもがいじめられるとか、すごく批判されて、子どもがかわいそうって…」
男性として生きているきみちゃんは、妊娠中のからだのつらさも訴えにくい。
きみちゃん
「妊婦として公にできないというか、したくない自分がいたりとか、公共交通機関を使ったときに席に座れないとか」
2人は葛藤を感じながらも、新しい命に希望を託している。名前には「希」という漢字を使うと決めている。
きみちゃん
「隠れて生活している人もいっぱいいると思うので、少しでもその人たちの希望になれたら」
ちかさん
「傍から見たら抵抗ある人もいると思うけど、そういったことが普通に日常になっていく環境になればいいと思っています」
男性の受診を想定していなかった産婦人科では、対応も手探りだ。
助産師
「産科の外来受診でこういうのは避けて欲しいなっていうことがあれば、教えて欲しい。あとは出産で、下から産むのはどう?抵抗感とかは…」
妊娠はきみちゃんに、からだが女性である事実を突きつける。
札幌医科大学 産婦人科学講座 新開翔太助教
「からだは女性としてどんどん特徴が出てくる。そこに対する違和感を持っていないかというのは慎重に聞き取りを行いました。気持ちとしては今でも男性なんだという話は聞いています。ただ、今の妊娠している状態のことをどう思っているのと聞くと、本人も曖昧にしているような印象でした」
■性別適合手術決意も…「自分たちの子どもが欲しい」
きみちゃんは中学で生徒会長を務め、スポーツも万能、活発な学生時代を過ごした。一方で幼い頃から、自分の性別が男であるのか女であるのか、迷い続けてきたという。
 
きみちゃん
「服を買う時もメンズの服を買ったり、女性らしい格好をしたら気持ちが変わるのかとか試したりもしましたけど…“女装している気持ち”になっていたというか…」
膨らむ胸に嫌悪感があり、さらしを巻いて目立たなくしていたことも。同じ悩みを抱える人たちと出会い、大学卒業後にトランスジェンダーであることを自覚した。
きみちゃん
「ノートにばーっと自分のことを書いて、父親と母親にカミングアウト的なことをした。男性としてこれからは生きていきたいっていうことと、それは親の育て方や親のせいじゃないってことを書いていました」
25歳で性同一性障害と診断され、性別適合手術を受けることを決めた。それは戸籍の性別を変えるためにも必要だった。
「性同一性障害特例法」いわゆる「特例法」では、戸籍の性別変更には、生殖腺(精巣・卵巣など)が無いこと、またはその機能を永遠に失っていることを条件としている。自分の子どもを持つことはできなくなるのだ。
きみちゃんは27歳のとき、乳腺を摘出した。胸には大きな手術の傷跡が残る。その後、子宮と卵巣も取る予定だった。しかし、パートナーのちかさんと出会い、考えを変えた。
きみちゃん
「子どもができる可能性があるならっていう話を何度かして、取ってしまったら(子どもを産む)可能性はゼロになるっていうところがあったので…」
ちかさん