退屈日記「不安でしょうがない日本の未来、何が日本を凋落させているのか?」 Posted on 2022/06/22 辻 仁成 作家 パリ

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この円安は、正直、日本の終わりを物語っているのだけれど、日銀も政府も残念なことに、なんのビジョンもないように感じて、悲しくなる。
昔、日本の円は安定資産と言われていた。
戦争などがあると円が上がった。なので、円が急落した時、え、なんで、と思った。
この凄まじい円の急落は日本の終わりを意味しているのだろうか?
海外で暮らしているぼくだけれど、ぼくの収益の8割は日本からなのである。
外貨を稼ぐことがまだ出来ないでいるぼくは円が弱くなると困る。
1月、1ユーロが128円だった。もうすぐ150円になりそうな勢いである。なるような気がする。
日本からお金を送金すると、空中でどんどん消えている仕組みなのだ。
20年前、一度、1ユーロ180円まで円が落下したことがあった。ユーロが出来た年、1ユーロ100円だったのに・・・。
かつて、シャルルドゴール空港からパリに向かう道の左右の看板はすべて日本企業のものだった、しかし、今は残念なことにほぼない。
韓国や中国の企業の看板ばかりである。


この急激な円安の原因を日本はわかっているだろうか?
ぼくが薄々感じているのは、政治の不在、である。
日本は国会議員がたくさんいるけれど、国益を左右できる国会議員が何人いる? 
別にぼくはフランスの回し者じゃないけれど、フランスは規模感でいうと日本の半分の国だが、政治家が優秀なので、EUを動かしたり、国のプレゼンスを維持し、
超大国ではないのに、つねに国際政治におけるキャスティングボードを掴んでいる。
あるいはそういう印象がある。
簡単にいうと政治家を育てる大学が充実しているから、強いのだ。
ウクライナ危機があっても、ユーロは安定し、少子化が進む日本とは正反対で子供が多い。長期ビジョンを描ける政治集団が豊富に存在しているのに対し、
日本の政治家は目先の選挙ばかりに明け暮れ、選挙になると、選挙に勝つための公約だけは勇ましく、タレント議員二世議員が乱立している印象がぬぐえない。
それは結局、日本の未来を先細りさせているだけだ。
まだ手遅れだとは思えないが、そうとう瀬戸際にいると思うし、円は簡単に安定しない気がしてならない。
ウクライナ危機が数年続く可能性が十分あるので、その被害を一番これから受けるのは資源のない、発想が鈍っている日本ということになる。

ここにきて、トヨタがダメになると、日本は一気に終わるかもしれない、と思うことが多くなった。
豊田さんは素晴らしい経営力をもっていらっしゃるけれど、トヨタの車を見ていると、ちょっとだけ、心配なことがある。
ぼくごときが偉そうなことは言えないけれど、それはデザインだ。技術が凄いのに、デザインがちょっと気になる。
日産もそうだけど、日本車のデザイン力が鈍っている気がするのは、ぼくだけか。日本車だけが違う方向を向いている気がしてならない。
いや、フランスの車はもっとデザインを見失っているけれど・・・。笑。

1200億円稼いでいる若い経営者が、これから何をするのか、VTuberが何かもわからないぼくは、そのSF的な世界を指をくわえて見上げているしかない・・・。
その人の成功だけに、ぼくらはおんぶに抱っこできるだろうか? その若い人たちの会社の利益はフジテレビを超えたということだけど、
むしろバブルを象徴したフジテレビの凋落の方が心配でならない。
夢の中の三人の広告代理店は特に意見を持たなかった。
それは、日本にビジョンがもうない、ということを示唆していたのかもしれない。
危機感をもって、発想を転換しないとならないのは、あの三人の代理店マンかもしれない。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。

https://www.designstoriesinc.com/jinsei/daily-2907/