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カナダ、国会議員に防犯ブザー配布へ 脅迫やいやがらせ相次ぎ

国会議員へのハラスメント(嫌がらせ)や脅迫が問題となっているカナダで、緊急の際に警察に通報できる防犯ブザーが議員に配布されることになった。

マルコ・メンディチーノ公共安全相は、「オンライン上の非常にネガティブで有害な言説」を懸念していると述べた。

カナダではかねて、議員への暴力や脅迫が相次いでいる。ジャスティン・トルドー首相も昨年、選挙活動で訪れたオンタリオ州ロンドンで石を投げられた。

メンディチーノ氏は、政治家の安全対策を強化するために防犯ブザーを導入すると説明。また、議員の自宅にカメラや警報器といった防犯対策を施すとともに、暴力に発展するかもしれない状況での対応訓練も提供する。
「暴言や身体的な対立に近い状態、暴力の扇動や殺害予告を目にすることなく、活発な議論ができる空間が必要だ」と、メンディチーノ氏は述べた。

メンディチーノ氏自身も先月、個人による拳銃の所有を全面的に凍結する法案を議会に提出した後に脅迫を受けたという。

政治家からは以前、議員の安全を守る王立カナダ騎馬警察(RCMP)がこうした懸念を真剣にとらえていないと批判する声も出ていた。
シーク教徒の新民主党(NDP)のジャグメート・シン党首は先月、オンタリオ州ピーターバラでの活動中に抗議者たちから嫌がらせを受けた。

この時撮影された動画には、暴徒たちがシン氏に侮蔑的な言葉を投げかけ、「裏切り者」、「死んでしまえ」と叫ぶ様子が映っていた。

シン氏はこの出来事について、「自分のキャリアの中で最も激しく、脅迫的で、侮辱的な攻撃だった」と語った。また、スタッフも身の危険を感じていたと述べた。

NDPのヘザー・マクファーソン議員はCBCニュースに出演した際、家族の安全が心配だと話した。また、ペットの犬を殺すという脅迫を受けたことがあると述べた。

与党・自由党のジュディー・スグロ議員は、これまで防犯ブザーを持ち歩いていなかったが、誰かが自宅までついてくる出来事があってから携帯するようになったという。

「こういう場合、女性は特に弱い立場に置かれ、また弱いと感じる。そのため全ての議員の安全を改善する必要がある」とスグロ議員は語った。

トルドー首相にも脅威
こうした暴言が激化したのは、2月と3月にワクチン義務化に反対するデモがオタワを占拠して以来だと指摘する議員もいる。

このデモでは、「フリーダム・コンヴォイ(自由の車列)」を自称する人々がトラックなどで道をふさぎ、オタワを機能不全に陥れた。現地メディアによると、この抗議が行われていた数日間、トルドー首相とその家族は安全のために非公開の場所に避難していたという。

2020年には、数丁の銃で武装した男が、トルドー氏と家族の自宅の門をトラックで突き破った。この男はソーシャルメディアで陰謀論の「Qアノン」について投稿していたという。男は「首相と話したい」と言ったが、逮捕され、後に有罪を認めた。

また今年5月には、トルドー氏はブリティッシュコロンビア州で自由党の資金調達イベントに出席する予定だったが、会場外で攻撃的な抗議がエスカレートする可能性があったため、予定をキャンセルせざるを得なくなった。