「ドーン」。 轟音ごうおん とともに10門の155ミリりゅう弾砲が次々と火を噴く。発射された砲弾は延べ1500発に上った。

りゅう弾砲の実弾訓練を行う陸上自衛隊(陸自提供)
 りゅう弾砲は射程が20キロ・メートル超で、戦車と並ぶ地上戦の主力装備だ。米国は同じりゅう弾砲をウクライナに供与している。訓練に立ち会った自衛隊員は、「10日間も実弾を撃ち続ける訓練は自衛隊では考えられない」と驚きの声を上げた。

 自衛隊では予算の制約から、部隊ごとに年間で使える弾数が決まっており、部隊の希望通りに割り当てられることもほとんどない。自衛隊がりゅう弾砲の訓練を行っても、弾数の制約などから「訓練期間はせいぜい4日前後」(陸自関係者)が限界だという。米軍のように潤沢に実弾を撃つことはできないのが現状だ。

 日本の防衛費は、国内総生産(GDP)比1%が事実上の目安となっている。2022年度予算は約5兆4000億円で、GDP比で0・96%。
最近はイージス艦や最新鋭のF35戦闘機など高額の装備取得が優先され、弾薬や装備の修理に必要な部品への支出などは抑制されている。

 折しも、ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈しており、政府内では自衛隊が戦闘を続ける上で欠かせない弾薬の不足を懸念する声が高まっている。
河野克俊・前統合幕僚長は「島国の日本は援軍が来るまでに時間がかかる。持ちこたえる『継戦能力』の整備は急務だ」と指摘する。