21歳の青年が、自分で選び進んできた道で、新しい扉を開こうとしている。
 李承信(り すんしん)。2022年、ラグビー日本代表に初選出され、6月25日に福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で開催される
ウルグアイ代表戦の試合登録メンバーに選ばれた。背番号22をつけてベンチに入る。出場すれば、朝鮮高校出身者として初めて15人制日本代表キャップ獲得となる。

「本当に漠然とした目標だったんで、正直、こんなに早く選ばれるとは思っていなかったです」

 大阪朝鮮高級学校でプレーしていたころから才能は注目されていた。2017年度と2018年度に高校日本代表に選ばれ、
2020年にはジュニア・ジャパンでダブルキャプテンのひとりとしてチームをけん引し「ワールドラグビー パシフィック・チャレンジ」で初優勝を遂げた。
 これらの経験を通じ、李は世界を意識するようになる。大阪朝高を卒業後、進学した帝京大学を1年で辞め、海外への武者修行を決意。
アイルランド、ウェールズ、フィジーなどの選手と戦い、スピードやフィジカルの差、そしてラグビーへの理解度の違いを感じ、
世界へ出てレベルアップしたいと思ったのだ。
 本当は、ラグビーが国技とされるニュージーランドに留学したかった。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により渡航は不可となり、失意に暮れる。
実家のある神戸で独りトレーニングしていたところ、縁あって神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現・コベルコ神戸スティーラーズ)の施設を
使わせてもらうことになり、実力が評価されてスティーラーズ入団となった。

「大学を退学した時点で、自分が進む道に後悔がないように、一つひとつの行動だったり、過ごし方は大事だなと思っていました。
いま振り返っても後悔はしていない。もっともっと、自分が選んだ道に誇りをもてるように頑張っていきたいです」

 スティーラーズでは1年目からチャンスをつかんだ。トップリーグ2021の開幕戦でデビュー。2年目は、当時弱冠20歳ながら、
数々のタイトルを獲得してきた名門チームの副将を任され、リーダーシップを発揮しただけでなく、
新しく始まったリーグワンではチームの実戦(13試合)すべてに出場、スタンドオフ(10番)、インサイドセンター(12番)として活躍し、
5トライを含む97得点はディビジョン1全体で4位という成績だった。

 パフォーマンスはジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチの目に留まり、5月9日、代表候補選手としてリストに名を連ねる。
そして数週間後、日本代表入りが正式に決まった。

https://rugby-rp.com/2022/06/25/japan/85761