岸田文雄首相はこのほど、国会で極東ロシア・サハリン沖の原油・液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン1」と「サハリン2」について撤退しない方針を表明。サハリン事業をめぐっては、ロシアのウクライナ侵攻を受け、主要出資者の英シェルと米エクソンモービルが撤退を表明していた。

原油を採掘するサハリン1には伊藤忠商事と丸紅、石油資源開発などが間接的に出資。LNG開発事業のサハリン2には三井物産が12・5%、三菱商事が10%を出資する。2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、サハリン2に3割を出資する英シェルが3月上旬に撤退を表明。サハリン1に3割を出資する米エクソンも同様に徹底の方針を示していた。

経済産業省の幹部によると、撤退見送りは「リスクの大きさからすれば当然の判断」。エネルギー価格が高騰する中、サハリン事業を撤退すれば、電気・ガス料金へのしわ寄せは避けられない。

 また、G7などのロシア排斥と距離を置く中国は、サハリン権益にも関心を持っており、「日本勢が撤退すれば中国が代わりに投資する可能性が極めて高い」(経産省幹部)とされていた。

 ただ、日本はロシア制裁を堅持する姿勢を明確にしており、「サハリン撤退見送りの対外説明は丁寧に実施する必要がある」(外交筋)。政府内には、「米英勢などが撤退した権益をどうにかして取得できないか」と模索する動きもあるが、高官は「制裁破りに見えるのは確実で、撤退見送りが精一杯だ」と漏らしている。

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