https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220707/k10013706251000.html

議論が怖いので多数決じゃダメですか?投票とくじ引き民主主義

政治について自分の考えを主張し始めた途端、その場の“空気”が気まずくなった。

その人と私の考えは違っていた。

でも、たいした意見なんか持ってないし、“論破”されてもいやだし…

議論ってやっぱり、怖いものですよね?
この1年ほどの間、教員が学生たちに「話し合って決めて」と言うと、学生たちは「じゃあ、LINEで投票しよう」と言って、議論を避けることが多いというのです。

これに対して「意見交換したところで持論は変わらないから時間の無駄」「考えることって大事なんだけど」「多数派に付くのが良しという文化」といったさまざまな声があがっていました。
議論が怖い…
「その気持ち、わかります」

議論をしないで多数決をとることについて、同世代の若者はどう受けとめるのか聞いてみると、共感できると答える大学生がいました。

都内の大学に通う19歳のサヤさん(仮名)です。
どうしてそう思うのでしょうか?
サヤさん
自分の意見を言ったときに、そういう意見もあるんだと受けとめてくれたらいいですけど、「それって違くない?」って言われたら、自分自身を否定されたような気分になるので、それはできるだけ避けたいって思っちゃいます。怖くて自分の意見を言えない部分はありますね。
サヤさんには、自分の意見を主張しないほうがいいと思ったある出来事がありました。

大学の授業で、ある先輩が今の日本の政治について自分の考えを主張し始めたとき、周りの雰囲気が一瞬で気まずくなったというのです。
「家族にさえ、自分の意見や思想を伝えることはしないので、人と違う意見を持っていると周りに思われるのは怖いと思いました」
先輩と違う意見を持っていたサヤさんですが、相手のほうが知識が豊富で言い負かされてしまうと感じ、自分の意見を言って議論することはしませんでした。結局、「そういう考えもあるんですねー」と言って、その場は終わったといいます。

ほかの学生にも話を聞くと「相手がどんな意見を持っているのか知る機会すらなく、大多数の意見が“正解”なんじゃないかなって思っちゃうんです」といった声もありました。
「選挙に行こう」と言われても…
「政治について語りづらい雰囲気がある」というサヤさん。
6年前に選挙権が18歳に引き下げられ、サヤさんは高校3年生の時に初めて選挙に行きましたが、友だちのあいだで選挙が話題にのぼることはありませんでした。

また、当選したのはサヤさんが投票した人とは別の候補者で「自分の1票では何も変わらないのかな」と思ってしまったというサヤさん。去年の衆院選は、投票に行きませんでした。

サヤさんは大学で学ぶ中で、政治家は若者よりも数の多い高齢者向けの政策を打ち出しやすいという考えを知りました。今月10日の参院選の投票には行く予定でいます。
サヤさん
「正直、自分の1票に意味があるとはまだ思えないけれど、若者の投票率をあげることには貢献しないといけないですからね…」
「言い合える世の中に」
取材を進めると、意外な人たちが選挙の投票について自分たちの意見を表明していました。

声をあげていたのは若い世代に人気のある俳優やタレント、ミュージシャンなどいわゆる「芸能人」たちです。