かつて総理大臣の警護を担当したこともある警視庁元SPは、今回の警護体制についてこう悔やむ。

「現職の総理には警護チームが組まれて囲みますが、前総理ではSPが2名ほど、安倍さんのように前の前の元総理だと1名になります。安倍さんのSPは新幹線などでも常にとなりに座って警護を行ないます。

 奈良での演説は前日の夕方に決まったといいます。そうすると、安倍さんに張りついているSPには県警と警護計画を検討するような時間はなかったのだと思います。今回の警備には、要人警護を学んでいない奈良県警の警察官が多く動員されたことが推察されます」

 こうした警護体制のなか、発砲があった瞬間の動きについて「ありえない」と元SPが指摘する。

「少なくとも犯人が前に出てきた瞬間に、まず飛び出すべきです。そして、1発目が発射された時にSPの人間は、安倍さんに覆い被さらないといけない。そうしたことはSPになった時から叩き込まれているはずなのに。なぜ、そうした行動がとれなかったのか。犯人が2発目を撃つまでに時間もあったのに……」

 この日、安倍元首相を警護する人員は現場に20~30人いたとされるが、警視庁は現場配置を含む警備体制の詳細を明らかにしていない。元SPは日本ならではの要人警護の“限界”についても指摘する。

「日本だと銃は手に入りにくいから、主に想定されるのは刃物を持った人間からの要人警護となります。なので、そもそも今回のような拳銃による犯行はあまり想定されていないのです」

 この元SPが任務に当たっていた時代と現在の警護体制に違いはあれど、一国の元リーダーが演説中に背後から撃たれて死亡するという映像に、ネット上でも発砲時の行動に対する疑問の声も少なからずあがっている。

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