安倍元総理大臣が演説中に銃撃され死亡した事件について、アメリカの要人警護の専門家は、容疑者が背後に立っていた時点で不審者として対応すべきだったほか、1回目の発射のあと元総理大臣の身を守ることを優先すべきだったと指摘しています。

アメリカで大統領をはじめとする要人の警護にあたるシークレットサービスに20年間在籍し、当時のクリントン大統領、ブッシュ大統領、それにオバマ大統領などの警護にかかわった経験をもつチャールズ・マリノ氏が12日、NHKのインタビューに応じました。

この中でマリノ氏は「容疑者を含む何人かの人々が元総理大臣の背後にかばんなどを持った状態で立っており、現場が混とんとしていたように見受けられる。容疑者は荷物を持っていたにもかかわらず、制止されたり、立ち退くよう指示されたりしていない」と述べて容疑者が背後にいた時点で、不審者として対応すべきだったと指摘しました。

また、マリノ氏は1回目の発射のあとの対応について、瞬時に反応して元総理大臣をかばい避難させることができていなかった上、多数が容疑者のほうに向かっていったと指摘し「本来このような場合はまず警護の対象者のほうにできるかぎり多くの要員を向かわせ、攻撃者への対応は最小限の人数で行うべきだ。なぜなら警護の最大の目的は元総理大臣を守ることだからだ」と述べました。

また、「今回、警護担当者は必ずしも自分の責任範囲を明確に把握していなかったようにみえる。このため、大多数が本能的に容疑者のほうに向かったのではないか」と話しています。

この点についてマリノ氏は、「銃声を聞いたとき、人間の本能は逃げようとするものだが、警護の際にはその逆で身を挺して警護対象者を守らなければならない。シークレットサービスでは対応の訓練を何度も繰り返して体に反応を覚え込ませるようにしている。こうした訓練は非常に重要だ」と説明しました。

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