>>34
そうだよ

偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴と罵られた世の中を、私は経験してきた。もっとも、こんなことはかならずしも日本に限られたことではなかったし、また現代にのみ生じた現象ともいえない。それは古今東西の歴史書をひもとけばすぐわかることである。さればといって、それは過去のことだと安心してはおれない。つまり、そのような先例は、将来も同様な事象が起こり得るということを示唆しているとも受けとれるからである。いな、いな、もうすでに、現実の問題として現われ始めているのではないか。紀元節復活のごときは、その氷山の一角にすぎぬのではあるまいか。そして、こんな動きは、また戦争につながるのではないだろうか。こんなことを昼となく夜となく考えては、日本の前途に取越苦労をしているのは、私ひとりだけであろうか……。こんなことを書くと、そんな悪いやつは国民のごく一部にすぎない、と憤慨されるかもしれぬ。私もそうだろうとは思う。しかし、千羽の白鷺の中に一羽の烏がまじっても、ひじょうに目立つものである。「真実は何か」これが最近における私の日常生活のモットーである。私はこのモットーにしたがって本書を企画した。