先の警察庁OBは「要人警護の中でも、選挙期間中は最も難しい」と打ち明ける。不特定多数の大勢が集まる街頭演説の場所は、テロの標的となりやすい「ソフトターゲット」であるためだ。

 選挙期間中は候補者や応援弁士が有権者に握手や撮影、声掛けしようと近づくため、必然的に警護も難しくなる。今回のように急きょ予定が決まって警護警備計画を立てる必要に迫られた場合はなおさらだ。

 警護官は有権者らと接触させたくないのが本音だが、候補者や弁士は逆に触れ合うことを望む。最近はSNSで発信してもらうため、その傾向は顕著だ。多くの人が集まる場所では、警護担当者が通行人に道を空けてもらうよう要請するが「排除するような態度は慎むように」とたしなめられることも。

 警護官は不審者や不審物がないか十分に時間をかけてチェックしたいところだが、候補者や弁士は移動を繰り返すので「早くしてくれ」とせかされることになる。結局、警護官は政治家側の意向を聞き入れるしかない。

 19年参院選で、札幌市で安倍元首相が街頭演説中に「辞めろ」とやじを飛ばした男女2人が北海道警に排除された。2人は不当として道を相手に訴訟を起こし今年3月、札幌地裁は判決で違法性を認めた。

 演説には支持者だけではなく、アンチも訪れる。先のOBはこう話した。「言論の自由は何よりも最優先されるべきだ。でも聞いている限り、あの判決が警護を萎縮させたことは間違いない」。

"安倍元首相の銃撃事件で大失態、SPの「3秒ポカーン」が起きた背景とは(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース" https://news.yahoo.co.jp/articles/8d3f8974d6f8dcdd0a9479c66bc5b832084b2986?page=2