最も驚かされたのは、民営刑務所の多くで、収容率保証が行われていることだ。つまり、一定の受刑者を送りこめなかったら州が補償金を払う、というのだ。民営刑務所に積極的に犯罪者を送り込まなければいけないとすれば、そりゃあ150万人という膨大な数にもなるだろう、と思う。

また本書では、アメリカの刑務所の歴史も概観される。驚くべきことに「刑務所」は、1795年に誕生した直後から「収益を上げる場所」と認識されていた。囚人を使って金儲けをする、という発想が、特にアメリカ南部で脈々と受け継がれてきたのだ。それはまさに、新たな奴隷制度だ。

本書の元となった記事は、オバマ政権時代の司法省を動かし、連邦刑務所の民営を中止するという判断に寄与した。しかし、トランプ大統領がその決定を覆した。著者の記事で大打撃を受けたこの刑務所管理会社は、トランプ大統領が当選した日、株価が50%上昇したという。現実を変えるのは、難しい。