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問題なのは、大卒(総合職)の女性よりも、高卒の男性の方がはるかに早く課長に昇進することです。60歳時点では高卒男性の7割が課長以上になっているのに、大卒女性は2割強と半分にも満たないのです。

身分や性別のような生まれもった属性ではなく、学歴や資格、業績など個人の努力によって評価される社会が「近代」です。そして近代的な社会では、このようなことが起こるはずはないと山口さんはいいます。日本の会社はいまだに「前近代」、すなわち江戸時代と同じようなことをやっているのです。

しかし山口さんは、これは単純な女性差別ではないといいます。ある要素を調整すると男女の格差はなくなって、大卒の女性も男性社員と同じように出世しているからです。

その要素とは「就業時間」です。そんなバカな! と思うかもしれませんが、就業時間を揃えると大卒女性は男性社員と同じように昇進しているのです。驚くべきことに、日本の会社は残業時間で社員の昇進を決めているのです。

(山口一男『働き方の男女不平等 理論と実証分析』日本経済新聞出版社)