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わきの多汗症 治療の幅広がる…副作用少ない薬で快適に

わきの下などに大量の汗をかいてしまう「多汗症」。仕事や勉強など生活に支障を来す場合もあります。わきの多汗症向けに、副作用が少ない塗り薬が登場するなど、治療の選択肢が広がっています

 わきの多汗症は、明らかな原因がないにもかかわらず、わきの下に過剰な発汗が6か月以上続く病気です。週に1回以上、汗が多いと感じる場面があるなど、六つある項目のうち二つ以上が当てはまると診断されます。原因は不明です。

 厚生労働省の研究班によると、患者は20〜30歳代が中心で、発症の平均年齢は19・5歳。国内の有病率は5・7%にのぼります。

 洋服の汗染みが気になったり、外出や趣味、運動がおっくうになったりする人がいます。1日に何度も服を取りかえる必要があるほど重症の人もいます。

 多汗症は、長く体質の問題ととらえられてきましたが、日本皮膚科学会が2010年に診療指針と診断基準をまとめました

 治療は、薬物療法や手術などです。8割以上の人は薬で改善します。指針作りに携わった東京医科歯科大名誉教授の横関博雄さんは「最近は、選択できる薬が増えています。少ない副作用で快適な生活が送れます」と話しています。

 薬物療法は、塗り薬である塩化アルミニウム薬と、ボツリヌス菌の毒素による「ボトックス注射」が以前からあります。

 最初に使われる塩化アルミニウム薬は、汗の成分と結びつき、汗の出口をふさぐ効果があります。

 効果がない重症のケースでは、わきの下の15か所ほどにボトックスを注射します。発汗を促す神経信号「アセチルコリン」の分泌を抑えます。

 ただし、塩化アルミニウム薬は、保険適用の薬がなく、約半数の人に皮膚のかぶれや赤みが現れます。

 ボトックス注射は、保険適用ですが、1回あたり2万円程度と高額で、効果は半年ほどで弱まります。

1日1回塗る
 新たに20年に保険適用されたのが、わきの多汗症の塗り薬の「ソフピロニウム」です。ゲル状の薬の成分が、汗腺の受容体にくっついてアセチルコリンの結合を防ぎ、発汗を抑えます。1日1回、わきの下に塗ります。

 重症の人を対象にした臨床試験では、5割以上の人は6週間で汗の量が半分以下になりました。皮膚のかぶれや赤みの副作用は5%程度でした。

 この薬と同様の作用をもつ「グリコピロニウム」も保険で認められました。1日1回、薬液がしみこんだシートでわきの下を一拭きする使いきりタイプです。

 多汗症は病気だと知ってもらおうと、当事者らが4月、NPO法人「多汗症サポートグループ」(東京)を設立しました。高校生の頃から服の汗染みに悩まされてきたという副理事長の福士竜さん(45)は「治療できることを知らずストレスを抱える人もいます。患者同士で話し合える場を提供したい」と話しています。

 池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長の藤本智子さんは「汗をかくことは悪いことではありません。ただ、汗が多すぎて困るようであれば、一人で悩まず、医療機関に相談してください」と呼びかけています。