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元保育士の男性が漁師に…魚を獲るだけではない新しい漁師を目指し、海の世界へと飛び込んだワケとは  島根県松江市

島根県松江市の漁港に、元保育士という変わった経歴をもつ漁師がいます。
目指すのは、魚を獲るだけではない新しいスタイルの漁師。
保育士をやめて海の世界に飛び込んだのには、ある想いがありました。
午前3時半。
島根県松江市の御津漁港では、毎朝日が昇る前から漁の準備が始まります。
船員を率いるのは、小笹伸一郎さん(34)。
若手が多いチームの中で一番経験が長くリーダー的な存在ですが、この道一本でやってきたベテランというわけではありません。
というのも・・・
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「今が6年目ですかね。前職は保育士をしてました。」
小笹伸一郎さん
なんと小笹さん、元保育士という異色の経歴をもつ漁師。
5年前に海の世界に飛び込み、ふるさとである御津の漁師として働き始めました。
ここでは定置網漁を行っていますが・・・
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「この前200sのマンボウ入ったっすよ。えぐいっすよマジで。」
他にもイルカやジンベエザメなど、時々大物がかかるのだとか。
そして、この日も・・・ジョーズさながらの大きな何かがかかりました。
2メートル近くある「カジキ」です。
カジキ
その後も次々とあがる魚…大漁です。
漁を終えると港に帰り、とれた魚の梱包作業。
市場へ出荷する準備ができると、漁師の仕事は終わりなのですが、
小笹さんらは、水揚げされたばかりの魚を車に積んで市街地へと向かいます。
(音)
「お疲れ様です!」
やってきたのは、松江市内の飲食店。
店員
「イシガキあります?」
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「イシガキありますよ。イシガキもイシダイもあります。かたちもいいです。」
小笹さんは、お客さんに直接魚を届ける取り組みも行っています。
自ら店頭に魚を並べる
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「実際にお客様に渡すことで、どういったものが次欲しいかとか、こうあるともっと高く買えるのになってことも、どんどん言ってくださってて、僕らももっとこうした方がいいってことが聞けるのは、めちゃくちゃありがたいことだと思う。」
目指すのは、魚を獲るだけはない新しいスタイルの漁師。
小笹さんが漁師を志したのには、ある想いがありました。
納品を終え、御津に戻ってくると・・・
御津の住民
「何しに行っとただー?」
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「さかな!」
すれ違う町の人みんなが、小笹さんに声をかけてきます。
記者
「すごいあったかい町ですね。」
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「ほんとにそうなんですよ。」
小笹さんが漁師になった理由、それは地元・御津のためだと話します。
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「漁業が産業のこの御津っていう漁村なんですけど、やっぱ担い手が不足している。定置網自体が人がいないと成り立たない漁法で、僕も保育士はやりがいを持ってやってたんですけど、地元の産業である漁業っていうものに携わっていきたいなと思って。」
高齢化の進んでいたこの漁港で、たった1人の若手として始まった漁師生活。
もちろん不安もありましたが・・・
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「保育士やってて良かったと思います。ド素人からの挑戦だったので、定置網っていう集団で漁をするっていう漁業を始めて、いろんな方と関わらせてもらって、人と接することを勉強できたのは保育士をしてたからだと思うし。」
メンバー集めにも尽力し、数年でチームは若手中心に。
若手中心のメンバーに
すると、メンバーと共にある挑戦を始めました。
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「必ずしも漁が得意でない仲間もいて、漁だけじゃなく加工とか販売とか営業とか、色んなところで輝ける場所があるんじゃないかと思ってて。」
加工や販売も行っていこうと新たに会社を設立。
クラウドファンディングで資金を募り、自分たちで空き家を加工場へとリノベーションしています。
空き家を加工場にリノベーション
御津大敷網組合小笹 伸一郎さん
「獲るだけではなくて加工する漁師がおってもいいと思うし、そういうことも考えれる漁師が、これからの未来の漁師像なんじゃないかな。そういったところで僕らが頑張って良い漁村の形を作っていけば、みなさんが喜んでくれるのかなって。」
自分を育ててくれた町への恩返しとして始まった漁師生活。
地元産業の発展と町の活性化を目標にした小笹さんの挑戦が始まっています。