備え付けの小さな冷蔵庫に買ってきた食料の大部分を収めた速見は、野球帽とヤッケとサンダルを脱ぎ、
どんぶりに氷と大五郎と少量のポカリ・スウェットをぶちこみ、割り箸で掻き回した。
一度にワンカップ三杯分ほどを喉を鳴らせながら飲んだ。
露が浮かんだどんぶりには、まだ三分の二ほどポカリ・ハイが残った。
速見はアルコールが回ってくると共に猛然と吐き気が起こってくるのを覚えた。
パックからグラム100円の牛バラ肉のブロックを取り出し、塩コショウを振った。
玉ネギを二個ミジン切りにする。電熱器コンロに小さなフライパンを掛けてサラダ油を流しこむ。
換気扇を廻した。やがて、オイルが煙をあげはじめた。速見はそこに牛バラ肉を放りこんだ。
脂がはぜ、速見の眼鏡に飛び散る。フライパンのまわりから炎は上がらなかった。
ビーフがあまり生焼けにならないように、3分ほどで速見は肉を引っくり返し、高熱で両面を硬化させた。
また3分ほど待って電熱器を弱め、買ってきてあったマカロニ・サラダに玉ねぎのミジン切りの
一個分を混ぜた。
焦げたステーキを大皿に移し、その脇にマカロニ・サラダを盛りあげる。フライパンに
残った牛脂と肉汁のグレーヴィに残りの玉ネギのミジン切りを放りこんで掻き回し、キツネ色に焦がした。
そこにショーユと砂糖を入れて沸騰させ、料理酒を一合ほどぶちこんだ。
そうやって作ったグレーヴィ・ソースを焦げたステーキの上から流し、テーブルに運ぶ。
まだ中心部が冷たいステーキを、割り箸をいそがしく使って貪り食う。ときどき、
マカロニ・サラダで口の中の脂を取る。