【文春オンライン】元カルト信者の私が『ミッドサマー』に覚えた既視感
私がいたカルトについて具体名は出しませんが、多少カルト宗教について興味を持っている方なら
ご存知かもしれません。
宗教の教義は、真の父である教祖の名のもとに、悪魔によって堕落していない「真の神の子」としての
人格を完成させること。そして、同じ教団の信者を配偶者として教祖に選んでもらい、「真の家庭」を
作ること。最終的には世界中を一つの家族にして平和の内に統一することでした。

私はすっかり信用してしまったボランティア活動の先輩の勧めによって、冬休みの間に行われる研修会に
参加しました。最初は感謝の大切さやグループ内での価値観を共有することを学ぶ一般的な自己啓発セミナー
から始まり、次第に教祖(もちろん、講義の中では教祖などとは呼ばない)が世界平和を目指す活動家である
ことが明かされ、そして、最終的にカルト宗教の教義を学ぶに至りました。それはまるで、カエルが穏やかに
上昇する水温を知覚できずに茹でガエルになる寓話そのものでした。

私は研修会を経てすっかりカルト宗教の信者になり、更に教えへの理解を深める為という名目で、
ボランティア活動の先輩たちとともに、大学生の信者寮に住むことになりました。
入寮した夜、入寮者全員で祈祷をしました。必死に神や教祖に感謝や誓いを立てる為に叫び、
身振り手振りで訴える先輩たちの姿は自分が信用した先輩たちではありませんでした。
彼らは人としての個を喪失した、カルト宗教という怪物の一部でした。
https://bunshun.jp/articles/-/36616?page=2