ロシアのスパイ、国内企業社員に接触か 警視庁が異例の注意喚起 | 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220728/k00/00m/040/245000c

スパイとみられる在日ロシア通商代表部の職員が昨年、先端技術を持つ複数の国内企業の社員に接触したことが確認されたとして、警視庁公安部が企業側に情報漏えいの注意喚起をしていたことが捜査関係者への取材で判明した。警察当局が摘発前に企業側に通報するのは異例。経済安全保障の観点から、情報流出の未然防止のためにはいち早い注意喚起が不可欠と判断したという。

偶然装い食事に誘う

捜査関係者によると、昨年、東京都内の先端技術保有企業の通用門付近で、通商代表部職員が偶然を装って社員に声をかける様子が確認された。職員は身分を隠し、流ちょうな日本語で「道案内をお願いできませんか」と頼み、食事に誘うなどして社員から連絡先を聞き出していたという。

公安部の捜査で、この職員が別の半導体関連企業の社員にも接触していたことが判明。公安部は企業側に、ロシアのスパイによる接触があった恐れがあると通報し、職員と接触しないよう要請した。

過去には情報流出で逮捕も

ロシアのスパイ活動をめぐっては、2020年、大手通信会社の元社員がロシア通商代表部の元幹部の求めに応じ、通信設備に関する情報を流出させたとして、警視庁が元社員を不正競争防止法違反容疑で逮捕している。ロシア側は幅広い情報へのアクセス権を持つ社員を狙い、偶然を装って道案内名目で声をかけ、関係を深めているとされる。

警視庁幹部は「ロシアのスパイは高度に訓練されたプロで、接触する対象も慎重に選別しているとみられる。流出した情報は取り戻すことが不可能なので、今後も捜査と注意喚起の双方に力を入れていく」としている。【斎藤文太郎】