<ロシア軍優勢だったウクライナ東部の戦況を一変させる「ゲームチェンジャー」の実力>

アメリカがウクライナに提供したM142高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)は、射程の長さと、ロシア軍に深刻な打撃を与える能力の高さから、西側の軍事専門家たちからは戦況を一変させる「ゲームチェンジャー(戦況を一変させる兵器)」と呼ばれている。

【動画】ロシア軍も押し返すハイマースのすべて

ハイマースが初めてアメリカからウクライナに到着したのは6月。ロシア軍が完全支配を狙って攻勢をかける東部のドンバス地方で、ウクライナ軍がロシア軍を押し返すための強い味方になるとみられている。

アメリカのロッキード・マーティンが製造したこのロケット砲システムは、長射程で移動式、しかも精密誘導による砲撃が可能。戦場で圧倒的な力を発揮する兵器だ。実際の運用では標準的なアメリカ陸軍の車台「M1140」に搭載される。

GPS誘導ロケット弾を1基につき6発搭載可能で、再装填にも約1分しかかからない。運転手、射撃手、発射装置班長からなる少人数のチームで稼働可能だ。

ハイマースの最大射程は300キロだが、ウクライナ向けのハイマースでは約80キロに制限されている。ロシアを刺激し過ぎないようにするためだ。それでも、先に西側から供与されたM777榴弾砲と比べれば2倍近い。

ロシアは「悲惨な状況」

ハイマースは1990年代末に開発が進み、2005年から配備されている。イラクおよびシリアにおける過激派組織「イスラム国」(IS)との戦闘で重要な役割を果たした。2010年にはアフガニスタンにも配備され、タリバンに対するNATO軍の攻勢でも威力を発揮した。

アメリカ軍高官は7月15日、ウクライナ軍はハイマースを使用して、この数週間で100以上の「重要度の高い」ロシア側の標的を破壊したと述べた。この高官によれば、これらの標的は、弾薬庫、長射程砲の設置場所、指揮所、防空拠点、レーダーおよび通信ポイントなどだという。

アメリカ陸軍の退役中将マーク・ハートリングは16日、ハイマースを「ゲームチェンジャー」と形容し、ロシア軍はいまや「悲惨な状況」に陥っていると述べた。ウクライナ側が現在、ロシア軍との戦闘で用いている大半の大砲と比べても、ハイマースは射程距離が長く、精度および正確度で勝っているからだ。

ハートリングは5月末の時点で、ハイマースについて、「より機動性があり、必要な訓練も少なく、メンテナンスやサポートにも手間がかからない」と書いていた。

ホワイトハウスは15日、ハイマース4基の追加供与を発表。先に提供した12基と合わせて16基になる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9f6c98958276236c5d5db395bedeac42dce63527