「性教育の灯、消したくない」 元教諭が明かす七生事件の真相
国本愛

毎日新聞 2022/7/29 16:00(最終更新 7/29 17:10) 有料記事 4513文字
 愛用の青いスマートフォンには、心身に障害がある若者から頻繁にメールや電話が入る。何気ない日常会話だったり、生活の相談だったりする。特に多いのが性の悩みという。

 日暮(ひぐらし)かをるさん(73)は、その一つ一つに応えている。<自分の体を触りたくなるけど、どうしたらいいの>。自慰行為を求める自分に悩んでいる20代の女性には、こんなメールを返信した。<一人の時に体を傷つけないで触るのは悪いことじゃないよ。否定的に考えないで大丈夫>

 東京都立の特別支援学校で約40年間、教諭を務め、とりわけ性教育に力を入れてきた。2009年に定年退職後も、新型コロナウイルス禍の前は月に1、2回ほど、首都圏の障害者向け作業所や支援施設に講師として招かれ、若者たちに性教育の授業をしてきた。

 「大半の子が学校できちんと性教育を受けていないから、みんな興味津々で聴いています」。赤ちゃんがお年寄りになるまでを描いた絵巻物を見せて「こんなふうに人は成長していくんだよ」と伝えたり、手作りの人形を使いながら男女の体の違いについてのクイズを出したり。月経や精通の体験談を出し合ってもらうこともあれば、同性愛や障害など人間の多様性について教えることもある。

 「七生の性教育の灯を消したくない」。ずっと、そんな思いが原動力になってきた。

「自分が大切な存在だと気付かせる」
 東京都日野市にある都立七生(ななお)養護学校(現都立七生特別支援学校)に赴任したのは、40代半ばだった。知的障害のある小学生から高校生まで約160人が通っていた。その半数ほどは親元で育てられなかったり、虐待を受けたりするなどの事情から隣接する入所施設で暮らしていた。

 赴任当時は、意味を理解しないまま生徒が性行為をしたり、性的ないたずらが広がったりしていることが校内で問題となっていた。思春期になると、体や心に変化が訪れ、性衝動も生まれる。単に禁止するだけでは止められず、教員たちは悩んでいた。たどり着いたのが性をタブー視…

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