「安倍さん、昭恵さん、佐川さん、そして裁判長。私は真実が知りたいです」

赤木雅子さん「疑惑のままの国葬はご本人も望んでいない」佐川宣寿氏は一度も姿見せず結審

 財務省の公文書改ざんで死に追い込まれた赤木俊夫さん。その妻、雅子さんが佐川宣寿元財務省理財局長を訴えた裁判で、雅子さん自身が法廷で証言する本人尋問が27日、行われた。改ざんは安倍元首相が国会で「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と答弁したことが関係していると財務省幹部も認めている。雅子さんは「黒い疑惑のまま国葬にされることはご本人も望んでいないと思います。残されている昭恵さんが知っていることを話すことがとても大事です」と訴えた。

 この裁判は多くの報道機関が報じた。中でも毎日新聞は社会面で「真実知りたい」と題し、安倍元首相の国会答弁が改ざんのきっかけになったと指摘して「黒い疑惑のまま国葬にされるのは本人も望んでいないと思う」という核心の発言を紹介した。

 朝日新聞は「安倍さんが国会で発言したことが原因で改ざんがされた」と発言を要約。読売新聞は「(佐川氏らの)尋問を認めない裁判所は(改ざん問題の)再調査をしない政治家と一緒だ。法廷で改ざんの経緯を話してもらいたかった」という発言を伝えたが、安倍氏の国葬に触れた部分は両紙とも伝えなかった。

 発言を最も詳しく伝えたのは共同通信だ。赤木雅子さんの地元・神戸新聞に記事が掲載されている。法廷でパソコンばかり向いている佐川氏の代理人に対し雅子さんが「聞いてください!」と声を上げたことを紹介したのはここだけだ。

 各社各様に取り上げる中、雅子さんが最もありがたいと感じた記事。それは大阪の民放MBS=毎日放送(TBS系列)の報道だ。「『黒い疑惑のまま国葬されるのは…』自殺した財務省元職員の妻が銃撃事件について言及」と、タイトルから安倍氏の国葬を取り上げている。記事では法廷での雅子さんの国葬についての証言を紹介。さらに弁論後の取材に語った以下の発言をそのまま伝えている。

「黒い疑惑のまま安倍さんが国葬されてしまうと、まるで良い事しかしていないようなそういうイメージを抱くと思うんですね。でもそうじゃないんです。夫の死に関わることです。(安倍)昭恵さんは絶対に知っていることを私に伝えるべきだと思います」

 このニュースは3分ほどの動画とともにヤフーニュースに転載され、視聴回数はすでに170万回以上にのぼっている。

https://video.yahoo.co.jp/c/16778/ade214b35beeb47d5ee8552c8270ddd5385e270e

◇法廷での安倍氏巡る発言は伝えず礼賛コラム掲載の産経

 そんな中、産経新聞は、目立たない位置に10行で裁判を手短に伝えた。安倍氏を巡る発言にはまったく触れていない。一方で同じ日、阿比留瑠比論説委員のコラムで、米の歴史家が安倍氏の戦略を絶賛していると紹介している。それはご自由だが、赤木雅子さんが安倍氏に言及した証言はスルーし、礼賛コラムを大きく掲載するというのは、「都合の悪いことはなかったことにする」という政権の悪しき前例を忠実に守っているように見える。

 各紙の紙面に目を通した雅子さんは語った。

「すべての新聞に記事が載っているということは、感謝しかないです。阿比留さんについては……お会いしませんかと産経の方を通して前からお伝えしているんですけど、お返事がないんですよね。何を書くにしても、一度話を聞いてから書いてほしいですね」

 阿比留さん、記者としてどう思いますか?

(相澤冬樹/ジャーナリスト・元NHK記者)

https://news.yahoo.co.jp/articles/dd86a2736c0b98f6cf9bcdb74afb08351a9d7d45