個人の「歴史的評価」を追求した下院議長

ペロシ議長は蔡英文総統との会談(8月3日)で「台湾を見捨てない」と約束した。
全国紙など日本の大手メディアは台湾側の「熱烈歓迎」ぶりを伝えるが、訪問の内情を知れば、それは表向きに過ぎないと分かる。
英ガーディアン(電子版、8月2日付)は台湾紙の調査を引用して、「約3分の2の台湾人が、ペロシ議長の訪問は状況を不安定化させる」と考えていると報じた。
台湾紙の中国時報(電子版、8月2日付)は、アメリカと台湾の高官がいずれも訪問中止を求めたにもかかわらず、現在82歳で中間選挙(11月)後に退任する可能性が高いペロシ氏が「個人のレガシーの追求を堅持した」と書く。
今回の訪台計画が初めて報じられたのは7月18日。わずか2日後の20日にはバイデン大統領が「米軍は現時点では(ペロシ氏の訪台は)良くないと考えている」と述べ、強くけん制した。
中国の習近平国家主席との電話会談(7月28日)を目前にして訪台にゴーサインを出せば、首脳協議が中止になる恐れもあるとの計算もあっただろう。

インド太平洋調整官の説得も無視

前出の中国時報記事は、台湾の簫美琴駐米代表の台湾外交部宛て公電の内容をもとに、ペロシ氏が20日に簫氏に電話して訪台の意向を伝えたと報じる。
ペロシ氏はこのとき、バイデン大統領の先述のけん制発言を受け、台湾側も招待撤回に傾いていたことを初めて知ったという。
この動きを受け、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は7月22日に簫氏に電話し、ペロシ氏に繰り返し訪問延期を迫った経緯を明らかにした。
また同日、オースティン国防長官がペロシ氏に直接、訪台すれば中国が威嚇(いかく)行動に出る恐れがあることを伝えたという。
7月28日のバイデン氏との電話協議で習氏は、ペロシ議長の訪台を念頭に「火遊びをすれば身を焼く」と述べ、中国が「容認できない一線」のレッドラインを踏むことになると強く警告した。
ペロシ氏はキャンベル氏に対しバイデン大統領自身による説明を要求したが、そのタイミングで(大統領の)コロナ感染が判明したためにそれもかなわず、台湾側はペロシ氏の受け入れ準備に入ったという。

続く
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