https://news.yahoo.co.jp/articles/91c5728f10721c688594264d2cc87b9acee45694

89歳の妻のために79歳の夫が“車椅子自転車”を発明 夫婦で外出することに成功

ニュージーランドのニュープリマスに住むケビン・ハービー(Kevin Harvey)さんは、中古の電動自転車のフレームの前方に、車椅子を固定して溶接するという改造を行い、妻のベバリー(Beverley)さんと外出を楽しめるようになった。

89歳のベバリーさんは認知症を患っており、79歳のケビンさんは、電動自転車をもとにした車椅子自転車を自分で設計して、妻を前に乗せて走行する方が、坂道などを車椅子を押して上るよりも楽だろうと考えたのだ。

この車椅子自転車には、走行中もベバリーさんが安全に固定されるようシートベルトが装備されている。また、ディスクブレーキや、改造したフロントフォーク(前輪を支え、操舵を担う部分)も備えている。このフロントフォークは、カーブを曲がる際に車椅子が飛び出さないように湾曲させたものだ。

ケビンさんは、ニュージーランドの公共サービスラジオ放送局RNZに対し、この車椅子自転車は、前方に完全折り畳み式の車椅子を備えており(現在は、折り畳みできない状態になっている)、電動自転車には、前向きではなく後ろ向きに変えたフロント・ステム(ハンドルとフォークをつなぐ棒状のパーツ)を備えていると語った。

また、フォークは下へ延び、車椅子の2つの突き出たパーツの間にあるボトムレールにつながっていると述べた。ケビンさんはこの発明に満足しているが、一緒に車椅子自転車で、近所の海岸沿いの道を上り下りしながら、静けさと、陽光あふれる景色に浸っているときのベバリーさんの顔に浮かぶ満足そうな表情にはかなわない。

「旅」の様子を記録
この車椅子自転車のデザインの独創性は、通行人たちの注目を集めている。また、親しい人たちは、ケビンさんがベバリーさんに確かな配慮と愛情を注いでいることについてコメントしている。ケビンさんは時々、自身のFacebookに自分たちの写真をアップロードして、自転車での「旅」の様子を記録しているのだが、そこで二人の写真の代わりに、ベバリーさんだけの写真をアップするという方法も脚光を浴びている。

ある写真でケビンさんは、近頃は自転車に乗れる時間といえば、車椅子自転車でベバリーさんと外へ出かける時だけだが、人生の大切な瞬間をお互いに贈り合っている、と記している。

ケビンさんによれば、電動自転車は、改造前には時速45kmまで出すことができたが、現在の最高速度は時速20km程度に制限されているという。これは、改造でその速度に対応できなくなったからではなく、スピードを出すことをベバリーさんが好まないからだという。車椅子自転車が使えるようになるまで数カ月を要したが、それでもなお、ケビンさんは、次のサイクリングで必ず正常に動くように、修理と整備を怠らない。時々、自転車が不具合を起こし、そろそろ修理するべき時だとケビンさんに合図してくるのだ。
修理と改良を続けながら……
ケビンさんの投稿によると、以前、車椅子が前方に転がるのを防ぐために新しく手動ブレーキを取りつけて走っていたとき、目の前の坂道を乗り切るためには、もっと小さなチェーンホイールが必要だと気づいたという。ケビンさんはそれを実行に移し、小さなチェーンホイールを組み込み、サイクリングを続けた。

ベバリーさんが近所の歩道で初めてサイクリングをした時、ケビンさんは急いで携帯電話を手に取り、写真を撮った。岩浜が青い水平線に溶け込み、二人が家から抜け出して車椅子自転車に飛び乗るには、絶好の晴れ渡った日だった。その写真(この記事のトップ画像)には、ネオンオレンジ色のベストを着たベバリーさんが、嬉しそうな笑みを浮かべて、通りすがりの人に手を振る様子が写っている。